本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第118巻第1160号(2015年7月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

[1]はじめに

 ガラス繊維や炭素繊維で強化されたプラスチック系複合材料は多くの構造に適用されている。ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)は低コストで高強度であり、炭素繊維は高コストだが強度に加え剛性も必要な部位に適用される。

 複合材料においては、繊維破断、樹脂割れ、層間はく離、繊維座屈などの破壊モードがある。また、GFRPでは繰り返し負荷による疲労損傷が重要だが、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)では強度異方性のために圧縮強度が引っ張り強度より低く、層間はく離の発生で圧縮強度が極端に低下することから、衝撃後圧縮強度が重要である。

 GFRPの疲労損傷は繊維破断になるため目視で容易に発見できるが、CFRPの衝撃損傷である層間はく離は内部欠陥であり、目視検査は表面のデント検出に依存し、小さい欠陥は検出困難である。また、CFRPでは雷撃時に損傷が発生するため、その損傷もファスナー内部などでは目視困難で、耐雷材料を設置するなどの処置がとられる。

 以上から、複合材料の構造ヘルスモニタリング(Structural Health Monitoring:SHM)はCFRP構造を対象としたものが多い。GFRPにもそのまま適用可能な方法もあるので、ここではCFRP構造に対象を限定して、複合材料の構造ヘルスモニタリングの現状を紹介する。