「久山町研究」と連携

 弘前COIでは、日本を代表するコホート研究(長期間にわたる特定地域の健康状態の追跡調査・研究)として名高い、九州大学による「久山町研究」と連携し、岩木健康増進プロジェクトとのシナジー効果を狙う。続いて登壇した九州大学大学院医学研究院 環境医学分野教授の清原裕氏は、1961年から50年以上にわたり続けてきた同研究の成果を発表した。

九州大学の清原裕教授
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 福岡市に隣接する人口約8300人の久山町が研究対象に選ばれたのは、全国平均とほぼ同じ年齢・職業分布を持っており、ほぼ偏りのない平均的な日本人集団という事実に由来する。また、久山町研究が世界でもまれに見るコホート研究の代名詞として認識されているのは、その期間もさることながら、80%を誇る健診率、99%の追跡率、そして75%の剖検率(死後の病理解剖率)といった高精度のデータを蓄積している点にある。

 同研究では1985年の段階から65歳以上の高齢者を対象とした認知症の調査を実施し、以降5回にわたり認知症のスクリーニング調査を行なった。その結果、最初の結果と直近の結果を比較してみると、認知症患者は実に6倍に増加したという。

 「いくつかの病型に分類される認知症の中で、急激に増えているのはアルツハイマー病。久山町での7年間隔の調査で、倍ぐらいの勢いで増えている」(清原氏)。今のところ特効薬も予防薬もないアルツハイマー病ではあるが、糖尿病などの生活習慣病との関連付けを地道に研究した結果、ある一定の食事パターンが認知症を減らす傾向にあることが判明した。

 「和食、野菜、牛乳、乳製品などをしっかりと摂取し、米を減らしていくのが認知症のリスクを減らしてくれる。これにより、血管性認知症、アルツハイマー病、どちらのリスクも下がる可能性がある。認知症発生のメカニズムは不明でも、ある程度の予防は可能かもしれない」(清原氏)。