街のインフラをウォーカブルに

 セッション後半では、人々が健康になるよう、街のインフラからデザインしていくという考え方を提案した。この分野で先進的なのは米国で、同国ではウォーカブル(歩きやすい)都市を目指した街づくりが広がっているという。

 例えば、ニューヨークでは、マンハッタンの高架貨物線跡を空中緑道にリノベーション。ウッドデッキなど休憩できる場所も設けて、歩きやすくしている。サンフランシスコでも歩道を広げるとともに自転車レーンを設け、緑を増やすといった取り組みを進めて効果を上げている。米国では都市ごとの歩きやすさを数値化して示すWWWサイトがあり、そのスコアを参考にする人が多いため、こうした取り組みが進みやすいという。

 メディカル・イノベーターズ・サミットの会場となった日本橋エリアでも、歩道の拡幅や電線地中化、並木や石畳の整備、沿道建物の外装デザインによる雰囲気づくりなど、“歩きたくなる”街にするための工夫が施されている。「街の要素はいまや衣食住+医職が常識。特に医療に力を入れた街とうたうまでもなく、当たり前に予防医療の仕組みがインフラに組み込まれた街をつくっていくことが望ましい」(梅田氏)。

 梅田氏が言うような街づくりを日本で進めている具体例の一つとして、清水氏は「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)」を挙げた。神奈川県藤沢市でパナソニックなど19社1協会が推進するFujisawa SSTでは、エネルギーやヘルスケアなど多角的な視点で、100年先の暮らしを考えながらスマートインフラを構築している。「『まち親』というコンセプトで、街の住民や企業が課題を持ち寄ってアイデアを出し合い、Fujisawa SSTで検証するコミュニティー活動が盛ん」(清水氏)という。