「病院星空プロジェクト」を推進


 奥田晃子氏と奥田一貴氏は、姉弟で「病院星空プロジェクト」を推し進めている。病室にプラネタリウムを導入して、入院患者などに楽しんでもらうというものだ。プロジェクトの始まりは、晃子氏が、病院の個室に手作りのプラネタリウムを持ち込んで患者に喜ばれた体験から。晃子氏は「病室で患者と家族が一緒に星を見られたら、病気以外の話題が生まれて、前向きな気持ちになれるのではないか」とプロジェクトの狙いを説明する。

 一貴氏はプロジェクトを広く展開するため、病院やプラネタリウムのメーカーを巻き込んだビジネスモデルの構築を進めている。「病院は、産業が介入しづらい“聖域”のようになっている。それを打開する一助になれば。今後は、プラネタリウムを第1弾として、病院のあり方を変えるビジネスを考えていきたい」(一貴氏)。

「病院星空プロジェクト」に取り組む奥田姉弟
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 3組それぞれのスピーチの後、パネルディスカッションも行われた。「病院にどんなアートを取り入れられると思うか」との質問に猪子氏は「アートは勝手に作るものなので(特に病院での導入を前提とした制作は考えず)病院で買ってくれるなら持っていくだけ」と回答。「ただ、これまでの医療は病気の原因を取り除くことに集中してきたように思うが、今後はビッグデータの解析などで(因果関係が)よく分からないけど間接的な要因になっているらしいものも注目されていくのでは。その流れの中でアートを活用する動きも出てくるのかもしれない」と所感を述べた。

 パネルディスカッションは議論がやや噛み合わない様子で、複数分野の“共通言語”を探る難しさが感じられたが、会場には学生を中心に多くの人が集まっていた。