救命救急外来でのシステムによるリアルタイムの診療記録記載は可能か――。メーカー製電子カルテの入力・参照インターフェースとしてFileMaker Proを利用している国立病院機構 大阪医療センターは、この仕組みを用いて高速入力用テンプレートによるER経過記録ツールを2014年1月より運用している(詳細記事)

 大阪医療センター 医療情報部長の岡垣篤彦氏は、同システムの1年間の運用状況の分析結果を、「第19回日本医療情報学会春季学術大会」のポスター発表で報告した。

ポスター発表をする岡垣篤彦氏
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 救命救急外来の診療速度に電子カルテ入力が追いつかず、これまで同部門での電子化は難しいとされてきた。FileMaker Proを電子カルテの入力・参照インターフェースとして運用してきた同センターも、従来救命救急外来では看護師によるシュライバー(医師事務作業補助者)が処置を行う救命救急医の隣で経過を専用用紙に記載していた。「救命救急外来の電子化(システム化)は慎重に行わないと、かえって致死率が上がったり、重大な結果をもたらしたりという国内外の報告がある。

 一方、救命救急外来の処置が訴訟になる場合もあり、紙の記録でいいのかと常に課題に上っていた」(岡垣氏)とし、診療速度に手書き記載が追いつかない、薬剤や処置の記載・請求漏れが生じる、記載者によっては判読できないケースがあるといった紙の経過表を運用する課題を説明した。

 ER経過記録ツールは、救命救急外来で行う診療行為のうち頻度の高いものを選び、高速入力用テンプレートを作成し、実装したもの。高速入力用テンプレートは救命救急のガイドラインの「ABC」に沿って作成してあり、それぞれの項目フィールドに入力し確定すると、入力時刻とともに診療行為に付随するパラメーターを含んだ文字列が生成され、経時的な記録として表示される。「フリーテキスト入力欄もあり、現場の熟練した救命救急医と看護師が6カ月かけて、そのフリー入力の割合とテンプレートのチューンナップを行って完成させた」(岡垣氏)と、高速入力実現の背景を述べた。