メガソーラービジネス誌でも取り上げられたとおり、今年6月15日ころ、折からの突風により太陽光パネルが吹き飛ばされ、架台の多くが倒壊したという事故が発生した(関連記事)。

 このような事故の被害を受けた発電事業者は、被害者である。ここで、この吹き飛ばされた太陽光パネルが近傍を走行していた自動車に衝突した場合を考えてみよう。この場合、発電事業者は、自動車の所有者からみれば加害者たりうる。このような事例において、発電事業者は、自動車の所有者に対して、法的責任を負うのだろうか。

 民法717条は、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う」と定める。それゆえ、太陽光発電システムを土地に設置して発電事業を行うものは、このシステムの設置または保存に「瑕疵」がある場合、そのシステムの占有者として、法律上の損害賠償責任を負うことになる。

 ここでいう「瑕疵」とは、当該土地工作物の設置された場所の環境などを考慮して、本来的に備えるべき安全性を欠いている状態をいうものと理解されている。

 それゆえ、設計ミス、施工ミスあるいはメンテナンスの不備により、太陽光発電システムが当該設置された場所の環境などを考慮して本来的に備えるべき安全性を備えておらず、そのため、突風により吹き飛んでしまったというのであれば、発電事業者は、被害者である自動車の所有者に対して損害賠償責任を負うことになる。

 このように、太陽光発電システムのメンテナンス事項は、発電システムに不備がないかということのみならず、安全性を維持できているのかということも含まれるべきであろう。