ネットワーク関連の総合イベント「Interop Tokyo 2014」からSDN関連の注目トピックスを紹介する後編。今回はInteropのライブネットワークであるShowNetから「クラウドNFV」「SDN-IX」「VXLAN相互接続」「インタークラウド実験」を解説する。(本誌)

 ShowNetはInterop Tokyoというイベントの中で、最新の機材や技術を使い未来のインターネットを見据えて、様々な機材を相互接続しながら出展者や来場者にネットワークを提供するインフラストラクチャーとしての役割を担っている。2014年のShowNetでは10年先のインターネットを構成する技術として、SDNとNFVを用いたデモンストレーションを実施した。

NFV=Network Functions Virtualization。

 SDNやNFVは、広義あるいは狭義、仕様か概念によって、意味するものが異なる。今年のShowNetでは、SDNは「外部のソフトウエアからネットワーク機器を操作すること」、NFVは「仮想化された“ネットワークの機能”を必要に応じて選択し利用すること」とした。この定義の下、2013年後半からNOCメンバー内で議論を重ねSDNとNFVによるユーザー収容を設計した。

NOC=Network Operation Center。

ASを越えるSDN

 最初に今年のShowNetの構成について簡単に紹介する。例年と違うのは、2つのASに分けて構築されたことだ(図1)。背景には、通信事業者(キャリア)やコンテンツ事業者、クラウド事業者などのサービスごとにネットワークの構成が大きく異なっているという現状がある。そこでShowNetが持つ2つのAS番号(2バイト ASと4バイト AS)を異なるネットワークとして構築し、それぞれの特徴に応じた技術のデモを実現した。AS番号290のASは「キャリアAS」として構築され、主にバックボーン系の技術を用いて出展者や来場者へコネクティビティーを提供した。もう一方のAS番号131154のASは「クラウドAS」として構築され、後述するVXLANの相互接続実験やインタークラウドなど、仮想化環境やデータセンターにおける最先端の技術の実験や展示を実演した。

AS=Autonomous System。
VXLAN=Virtual eXtensible Local Area Network。レイヤー2のトンネリングプロトコルの一つ。
図1 ShowNet内に「クラウドAS」と「キャリアAS」を構築
ShowNetが持つ2つのAS番号をそれぞれ異なるネットワークとして構築した。
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 このように、ASごとに異なるサービスが存在する環境を模倣した今年のShowNetだが、SDNとNFVを設計するに当たって「ユーザーが欲しい機能を、欲しい事業者から利用する」というコンセプトを設定した。「ユーザーはまずキャリアなどから接続性を購入する。そしてネットワークに必要な機能、例えばファイアウォールなどは、仮想ネットワーク資源として事業者から購入する」というモデルだ。これによりユーザーは、機器を自前で導入(オンプレミス)することなく、ネットワークに必要な機能を任意の事業者から必要な分だけ導入できる。

 このモデルを実現するために、ユーザーをキャリアAS側で収容し、仮想ネットワーク資源をクラウドAS側に「NFVクラウド」として構築した。NFVクラウド上にユーザーごとの仮想ネットワークを作成し、必要な機能や設定を実施する。次に、ユーザーのネットワークをキャリアASからクラウドASへと接続する。多数のユーザーネットワークについて個別に設定していくと運用コストが高くなるため、SDNを適用して自動化した。対象としたのは「AS間の接続」と「AS内の設定」という2つのポイントだ。