広域ネットワーク(WAN)向けSDNの分野において、「Segment Routing」と呼ぶ技術が注目を集めている。既存の自律分散型ネットワークのメリットは残しつつ、適材適所で集中化機能を実装する。そのメリットや基本動作、ユースケースなどを紹介する。(本誌)
SDN(Software Defined Networking)という言葉が最初にメディアで取り上げられたのは2009年4月のMIT Technology Review† と言われている。その後、様々な期待が語られ、方法論やネットワークアーキテクチャーの見直しがなされた†。
†見直しがなされた=詳細はシスコのオフィ シャルブログを参照してほしい。URLはhttp://gblogs.cisco.com/jp/2013/07/network-architecture4/。
時には混乱も見られた。よくあるのが、適用領域が異なるのに、「SDN」という言葉の下に渾然と議論してしまうようなケースだ。適用領域によらない共通性はあるものの、求められる要件や技術要素は、データセンター内の仮想ネットワークやファブリックネットワーク、キャンパスネットワーク、WANといった領域ごとに異なる。
今回はWANのためのSDNにフォーカスして、最近注目されている技術「Segment Routing」を紹介する(別掲記事参照)。
経由するノードやリンクを自由に変更
Segment Routingは、ソースルーティングを実現する技術の一つである。SID(Segment ID)と呼ぶ識別子を使って、送信側から中継ノードまでのパスを明示的に指定できる。トラフィックの特性やサービス上の要請などに応じて、明示的パスを指示することで、経由するリンクやノードを自由に変えられる。
これに対し通常のIPルーティングでは、パケットは専ら宛先アドレスに従ってルーティングされる。宛先が同じパケットは基本的にすべて同じ経路を通る†。
もちろんソースルーティングを実現する技術はSegment Routingだけではない†。よく知られている技術にMPLS-TE(Multi-Protocol Label Switching-Traffic Engineering)がある。FEC(転送等価クラス)という概念を使って、宛先ベースからフローベースまで、ルーティングの粒度を自由に選べるようになっている。例えばQoS(Quality of Service)のクラス、送信元アドレスのグループ、サービス種別などをFECの単位にできる。
しかしMPLS-TEは、(1)運用が複雑になる、(2)スケーラビリティーに難がある─という課題を抱えている。Segment Routingはこの2つの課題を解決する。その手法を解説しよう。