設置高を1.5mにしてヤギのジャンプに備える

 フルージックは、里山再生に役立てるため、美濃加茂市と岐阜大学と協力し、ヤギの放牧による植生の変化を調査・研究している。イビデンエンジニアリングは昨年7月、ヤギ除草の導入に向けたデータ収集を目的に、フルージックと岐阜大学の協力を得て、ヤギ5頭による除草試験を3週間、実施した。その結果、除草効果を確かめられ、糞の臭いや鳴き声などもほとんど気にならないと分かった。また、従業員や地元住民の「癒し」として一定の効果が確認できた。そこで、神戸事業場の太陽光発電所への本格導入に踏み切った。

図14●電線はできる限り地中に埋設し、露出する部分は保護カバーで覆った(出所:日経BP)
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図15●発電所内を映す監視カメラを設置し、映像を確認できるようした(出所:日経BP)
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 同発電所は、ヤギ除草の導入を前提に設計したため、随所にヤギの放牧への配慮がある。本来、岩場にも生息するヤギは跳躍能力が高い。そのため太陽光パネルの設置高を1.5mも確保し、ヤギが飛び乗らないようにした。また、電線はできる限り地中に埋設し、どうしても露出する部分はカバーで覆った(図14)。

 また、冒頭で紹介したように、井戸と雨避けとスノコ、塩分とミネラル補給用にブロック状の鉱塩を配置した。深さ約40mの井戸を掘り、ヤギの飲み水を汲み上げることにした。定期巡回の際に、容器に飲み水が少ない場合、汲み上げて補充している。

 イビデンエンジニアリングでは、ヤギ除草中、自社社員による巡回の頻度を増やすほか、イビデン神戸事業場の守衛担当者に1日1回の巡回時にヤギの様子を確認するように依頼し、異常があれば、連絡を受ける仕組みにしている。

 また、発電所内を映す監視カメラを設置し、映像を確認できるようしている(図15)。このカメラは、ヤギの様子を見るとともに、ヤギの盗難対策でもある。実は、2014年8月に除草用にフルージックの派遣したヤギがベトナム人に盗まれ食べられるという事件があった。監視カメラを設置することで、盗難を抑止する効果もある。