「医療経済評価と大規模データの活用 ~試練なのか?チャンスなのか?~」――。

 こうしたテーマで講演したのは、クレコンメディカルアセスメント 取締役最高業務責任者の小林慎氏。メディカル・データ・ビジョンが2015年5月15日に開催した大規模データベースセミナーのにおいて、京都大学 大学院医学研究科・薬剤疫学 教授の川上浩司氏(関連記事)に続いて登壇した。

クレコンメディカルアセスメント 取締役最高業務責任者の小林慎氏
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 まず小林氏が取り上げたのは、「医療経済評価」。例えば、医療費や薬価などを議論する際には「費用対効果分析」が一つのポイントとなる。費用対効果を考えた場合、多くの人が「費用効果的(cost-effective)=医療費削減」と考えるだろう。確かに、効果を金額で換算する利益重視のビジネス社会であれば「費用効果的=費用の削減」という考え方は正しい。

 しかし、医療においてこれは間違いとなる。なぜなら、医療の効果(=目的)は「医療費の削減」ではないからだ。医療の目的は「国民の健康の維持と改善」であるため、医療の費用対効果を金額だけで換算するのはナンセンス。そのため、「費用効果的(cost-effective)=医療費削減」ではないとなるわけだ。

 医療では、医療費が上がってもそれに見合った効果(=価値)が得られるのであれば、それは費用効果的であると見なされる。これはつまり「効果が上がれば、医療費は増加してもいい」(小林氏)ということ。これこそが「医療における費用対効果の特徴的なところだ」(同氏)。