山地憲治・地球環境産業技術研究機構(RITE)理事・研究所長

6月1日、長期エネルギー需給見通し小委員会で、2030年時点の望ましい電源構成(ベストミックス)案を含む、「長期エネルギー需給見通し」が固まった。再生可能エネルギーの比率は22~24%となった。今後の焦点は、ベストミックスの数値を実現するため、再エネ政策がどう変わるかに移る。長期エネルギー需給見通し小委員会の委員で、新エネルギー小委員会の委員長を務める山地憲治・地球環境産業技術研究機構(RITE)理事・研究所長に、ベストミックスの評価と今後の再エネ政策の行方について聞いた。

――6月1日に「長期エネルギー需給見通し」が固まり、ベストミックスは、再エネ22~24%、原子力22~20%、LNG(液化天然ガス)火力27%、石炭火力26%、石油火力3%となりました。

山地 「ベストミックス」とはいうものの、実際には「ベスト」というより、「3E+S」をクリアできる「解」をなんとか作った、というのが実態でしょう。原発事故によって、従来のエネルギー政策の基本である「3E」(安定供給、環境適合性、経済効率性)にS(安全性)が加わったことが特徴で、各電源構成を細かく刻むなど、苦心のあとが伺えます。

 安定供給に関しては「一次エネルギーで25%」、環境適合性では「欧米にそん色ない温室効果ガスの削減目標」、安全性に関しては「原発比率を下げる」こと目標を掲げました。今回、特に工夫したのは経済効率性で、「現状よりも電力コストを下げる」を掲げました。

――「3E+S」の観点からは、評価できますか。

山地 4つの評価軸それぞれを一定の水準でどうにかクリアしたという点で、いまの段階でつくれる「解」としては、なんとか合格点になったと思います。ただ、この比率を実現するには、簡単ではありません。電力システム改革によって自由競争が活発化するなかでは、コストが最優先されがちです。特に石炭火力を「26%」に抑えられるかどうかが、最も高いハードルに思います。