5年後に発電設備を市に無償譲渡

図4●羽生市の河田晃明市長(右)と国際L&Dの金丸直幹社長(左)(出所:日経BP)
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 こうしたなかで、羽生市が、出力約600kWもの太陽光発電所の発電事業者になり得たのは、「リース方式」を活用したからだ。「リース」とは、リース会社が機械設備などを購入し、企業など借り手に比較的長期間、賃貸する仕組み。設備の所有権はリース会社にあるが、借り手は自ら購入した場合とほぼ同様に使える。「羽生市太陽光発電所」の場合、発電設備一式は、国際L&Dが所有し、羽生市は、国際L&Dと賃貸借契約(リース契約)を結び、5年間、決められた額のリース料を支払う(図4)。リースにしたことで、自治体にとっては、起債などで負債を増やさずに、事業を開始した初年度から、リース料として毎年、定額で経費として処理できる。支払うリース料の総額は5年間で約2億円となる。

 太陽光発電所をリース方式で設置する場合、リース料の中に設備の建設コストだけでなく、発電所の稼働に付随して発生するコスト、例えば、定期点検や保守・修理コスト、故障対応などのO&M(運営・保守)業務に加え、火災など各種保険に加入する費用も含めることが多い。こうした方式の契約を「包括的施設リース契約」と呼ぶ場合もある(図5)。

図5●包括的施設リース契約の仕組み(出所:日経BP)
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 自治体がリース方式で、太陽光発電事業に乗り出した例としては、群馬県太田市や秋田市などの例がある。ただ、リース期間は15~20年と固定価格買取制度(FIT)に基づく売電期間とほぼ同期間に設定している。これに対し、「羽生市太陽光発電所」では、リース期間は5年で、契約終了後は、国際L&Dが発電設備一式を無償で羽生市に譲渡する。

 リース期間を短くすれば、1回分のリース料は高くなるが、ファイナンスに係るコストが減るため、発電事業全体の収益性が高まる。同発電所の場合、毎年約2500万円、20年間で約5億円の売電収入が見込まれている。5年間のリース料は約2億円。リース期間終了後は、引き続きO&Mを国際L&Dに委託し、保険会社と直接、保険契約を結ぶ。こうした経費を差し引くと、20年間で、約1億6800万円の収益を生む事業計画となっている。