――700万kWの連系でも、挑戦的であったとすれば、817万kWが接続された場合、どのような系統運用で、需給バランスを維持するのですか。

能見 系統WGでは、太陽光と風力の合成出力を採用するなど、最終的に太陽光発電の接続可能量は「817万kW」となりました。これが九電の電力系統にとってどれほどのインパクトかは、日中の軽負荷期であるゴールデンウィークに如実に表れます。

 すでに九電管内には約470万kWの太陽光が接続しています。今年のゴールデンウィーク期間中の5月5日は晴れでした。当日の日中、電力需要は約770万kWで、そこに太陽光から最大で約370万kWの出力が供給されました。水力も含めると、一時的に再エネの出力(kW)比率は54%に達しました。その日全体の供給量(kWh)で見ても再エネ比率は24%まで高まりました。この数字は、奇しくも政府が先日、公表した2030年のベストミックス案の再エネ比率と同水準です。九州では一時的にせよ、すでに日本全体の2030年の目標に達しているのです。

 さらに「817万kW」まで太陽光発電を接続すると、こうした日中の軽負荷期には需要を超えてしまう可能性があります。かなりハードルが高い数値です。この水準まで接続が増えた場合、系統運用では、以下の五つの前提が必要になります。

 一つ目は、自社の火力発電所による発電を、最小に絞ることです。石油火力はゼロ、石炭火力も1台だけ残してすべて止めます。稼働する1台も最大限に出力を絞ります。天然ガス火力も、周波数調整や需給バランス調整のための最低限の運転にとどめます。

 二つ目は、水力発電所のなかでも、ダムなどの貯水が可能な設備は、日中の軽負荷期には止め、太陽光が発電しない夜間に稼働させます。

 三つ目は、揚水発電を最大限に活用します。九州電力は8台の揚水発電所があり、定期点検や保守などで常時、1台が止まっていることを想定し、7台をフル稼働させ、水を汲み上げて需要を増やします。

 四つ目は、需要以上に発電して余った電力を、地域間連系線を使って、電力市場に売ります。これら四つの対策を打ち、それでも電力が余ってしまった場合、五つ目の最後の手段として、出力抑制(出力制御)を講じることになります。

 従来のFITの運用(旧ルール)では、無補償による出力抑制の日数は、年間最大30日間でした。

 九州電力の送電網に、817万kWの太陽光発電を接続した場合、試算では、年間で92日間、出力抑制しなければならない可能性があります。ただ、出力抑制は輪番制にすることにしており、各発電事業者にとっては、最大30日に抑えようと考えています。