ウエアラブルセンサーをどのように応用サービスにつなげていくべきか。この課題にいち早く取り組んできた東京大学 名誉教授の板生 清氏(ウェアラブル環境情報ネット推進機構 理事長)が語った。NMEMS技術研究機構、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による共同研究事業「グリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクト」(2011年度~2014年度)の最終成果報告会(2月26日開催)における、「安全・安心・快適な社会に資する統合的センシング技術の現状と課題」と題する講演から構成した。

講演するウェアラブル環境情報ネット推進機構 理事長、東京大学 名誉教授の板生 清氏(撮影:著者)
講演するウェアラブル環境情報ネット推進機構 理事長、東京大学 名誉教授の板生 清氏(撮影:著者)
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 講演で板生氏は、社会の動向と産業の動向、技術の動向の3つが重なることで、はじめてイノベーションが実現すると強調した(図1)。つまり、世の中がどのように変わるのか、そこでニーズがどのように出てくるのか、そのニーズを技術がどのようにカバーしていくのかを知ることが重要になる。

図1●社会と産業、技術の動向(出所:東京大学の板生氏)
図1●社会と産業、技術の動向(出所:東京大学の板生氏)
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 技術は、微細化・小型化、そして個別適合という2つの方向に進化している。個別適合とは、利用者や設置する場所それぞれに最適化した機器や端末、サービスを実現するための要素を指す。

 例えば、いち早く実用化されているウエアラブル機器と位置付ける補聴器は、聴力などの違いに合わせたものを使う必要がある。他人用に最適化された補聴器を借りても、正確には聞こえない可能性があり、利用者それぞれに最適化する必要がある。

 補聴器は、同じハードウエアを使いながら、制御システムを調整することで、個別に最適化している。こうした、個別適合のための技術が鍵になるとしている。