葛谷氏の講演の様子
葛谷氏の講演の様子
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 高齢者ケアの分野で、「フレイル」と呼ぶ概念が注目を集めつつある。英語で「虚弱」を意味するFrailtyに対応する概念として、日本老年医学会が2014年5月に呼称を定めた。

 同学会はフレイル(Frailty)を次のように定義する。「高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性がこう進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態。筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念」(同学会によるpdf形式のステートメント)。

 フレイルが今、注目を集めているのは、この状態が自立から要介護へ移行する中間段階に位置するとともに、早期に発見して介入することで、自立状態へ復帰できる可能性があるためだ。すなわち、フレイルの早期発見と介入が、要介護に陥るのを防ぐ“防波堤”になり得る。

 名古屋大学未来社会創造機構・大学院医学系研究科 教授の葛谷雅文氏も、フレイルに着目することの重要性を説く専門家の一人だ。同氏は、「第18回 国際福祉健康産業展 ウェルフェア2015」(2015年5月21~23日、名古屋市国際展示場)の「医工連携シンポジウム 医工連携で実現する病気を知り健康を守る最先端科学技術」に登壇。「医療のパラダイムシフトと今後必要とされる健康長寿を目指した予防介入」と題し、フレイルに関する最新の知見や調査結果を紹介した。