前回は人工衛星のシステムを構成要素に分類することで同システムの全体像を紹介した。今回は、超小型衛星を支える主な要素技術について解説したい。ただ、その前に、ここ1年ほどで超小型衛星の分野では注目すべき動きが幾つかあったのでそれを紹介しておく。

H-IIA相乗りが商用解禁に!
 2014年4月24日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から「H-IIA」ロケットでの商用超小型衛星の公募が発表された(JAXAの告知ページ)。従来、大学などの実験用途に限定されていたH-IIA相乗りによる超小型衛星の打ち上げが、ついにビジネス用途にも門戸が開かれることになった。
 また同時に、H-IIAだけでなく、宇宙ステーションの日本実験モジュール「きぼう」の暴露部を利用したCubeSat(キューブサット)の放出にも商用利用の制度が導入された。試行段階という位置づけだが、世界の衛星打ち上げ市場を見ても競争力のある価格設定がなされている。超小型衛星の開発だけではなく打ち上げサービスにおいても、日本の存在感が高まることに期待したい。

ほどよし1、3、4号機が打ち上げ成功
 2014年6月20日には超小型衛星「ほどよし」の3、4号機が、11月6日には同1号機がそれぞれロシアの「ドニエプル」ロケットを使い、打ち上げられた。これらほどよしシリーズは内閣府最先端研究開発支援プログラムの資金によって、東京大学の中須賀真一教授を中心研究者とする産学連携で開発された衛星だ(ほどよし1号機ギャラリーページほどよし3、4号機のFacebookページ)。現在3機とも健全に運用が行われており、残りのほどよし2号機も2015年中には打ち上げられる予定となっている。

運搬用の台車に載せられた「ほどよし」1号機(左)とほどよし1号機が撮影した東京都心部(右)。
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衛星関連企業の買収に動くGoogle
 1mと高解像度のリモートセンシングを100kgのマイクロ級衛星で実現したベンチャー企業の米Skybox Imaging社――そんな同社を2014年8月に約500億円で買収したのが、あの米Google社だ。Skybox社は、現時点では「SkySat-1」「同2」といった2機の衛星を打ち上げているが、将来的には24機のコンステレーション(群衛星システム)による地球観測を計画している。「Google Maps」や「Google Earth」の画像の更新頻度の向上などに利用されると考えられる。
 この他にもGoogle社に関しては、150機の超小型衛星群によるインターネット通信システムの構築計画や米Space Exploration Technologies社(SpaceX)への10億米ドルもの出資などが伝えられている。このインターネットの巨人が超小型衛星をどう活用するのか、注目である。