照明によるエネルギー消費を削減する有効な手段の一つに昼光の利用がある。とくに昼間の利用が多いオフィスにおいては、省エネ効果が大きくなることが期待される。しかしながら昼光を照明として扱う場合、その光量の強さ、室内での光量の偏在などの影響により、期待されたほど室が明るく感じられないことがある。これは期待する明るさの根拠として、昼光導入による光量と天井灯など人工照明から得られる光量とによる水平面照度を指標としていることが主な原因と考えらえる。

 水平面照度は机上面での視作業に十分な光量が与えられているかを評価する際には有効な指標であるが、室空間全体の明るさの印象(以降「空間の明るさ感」と表現する)を評価するには十分ではないことが様々な研究1)-5)において指摘されている。これに対して最近の研究では、空間の明るさ感を定量的に評価するモデルが様々に提案6)-10)されており、その多くは視野の平均輝度から推定するものである。

 これらの研究により人間の印象に合致した明るさ推定方法が確立しつつあるが、評価可能な光環境は主に人工照明のみの場合が多く、昼光導入空間における明るさ感推定精度については依然検討の余地がある。例えば原11)は室内の平均輝度が同じであったとしても、窓面の輝度が高くなるほど室内の明るさ感は減少することを報告しており、また国府田12)らも窓面輝度と室内壁面輝度との対比が大きくなるほど暗く感じると報告している。

 これらの研究から定性的には室内と室外の輝度対比が大きくなるほど明るさ感を減じる効果があるといえるが、その影響を体系的に明らかにするためには、窓サイズ、室形状、屋内と屋外の光量のバランスなど多くの変数の組合せにおける検討が必要であり、現状では輝度分布による定量的な評価法の開発には至っていない。

 一方オフィスにおける昼光利用の一般的な方法の一つとして、昼光による光量をセンサで検出し、これと連動させて人工照明を制御する手法がある。昼光を検出するセンサは天井面に設置される場合がほとんどであり、このとき水平面の照度が一定となるよう人工照明の出力を制御する。しかしすでに述べたように、窓面の高輝度部分が存在することにより、空間の明るさ感は水平面照度から期待されるものよりも減少する場合がある。

 そこで本研究では、開口部が一面であるオフィスを想定した模型実験空間において、窓の大きさおよび昼光強度を変化させた場合の空間の明るさ感がどのように変化するかを被験者実験により明らかにした。