産業機器などの高精度測定やオーディオ信号の処理などに欠かせない24ビット分解能のA-D変換器IC。高分解のA-D変換を実現するのがΔΣ(デルタシグマ)変調技術である。

 一般に、ΔΣ変調方式を採用するA-D変換器は、ΔΣ変調器とデジタルフィルターから構成されている。ΔΣ変調器がまず、アナログ入力信号をデジタルのビットストリームに変換する。その後で、デジタルフィルターを使って、ビットストリームをアナログ入力信号の振幅に相当するデータワードに置き換える。

基本動作を解説

 ΔΣ変調器は、どのように動作するのだろうか。1次のΔΣ変調器の回路トポロジーを例にとり、基本的な動作を明らかにする(図1)。

図1 ΔΣ変調器の内部ブロック構成
1次のΔΣ変調器の回路トポロジーである

 ΔΣ変調器は、クロック信号にしたがって動作する。このクロック信号の周波数によって、アナログ入力信号をサンプリングする(標本化する)間隔が決まる。ΔΣ変調器を構成する帰還ループでは最初に、アナログ入力信号のサンプリング結果と1ビットD-A変換器の出力の差を積分する。次に、比較器(コンパレーター)が、積分器の出力結果をもとに、ΔΣ変調器の出力を決定する。

 その後、1ビットD-A変換器は、比較器の出力に応じて、正の基準電圧もしくは負の基準電圧に等しい電圧を生成する。もしΔΣ変調器の出力が1の場合は、アナログ入力信号から基準電圧分が引かれる。出力が0の場合は、アナログ入力信号に基準電圧分が加算される。