太陽光発電所を建設する際には、行政手続きの遅れ、敷地権の取得手続きの遅れ、ファイナンススキームの調整の遅れなどにより、工期が遅延することがある。このような工期遅延が生じた場合、太陽光発電事業者は、どのような損害賠償を請求できるだろうか。

 このような問題が生じた場合には、まず、契約書を確認する必要がある。

 民法420条1項は、「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない」と定める。ここでいう「債務の不履行」には工期遅延などの「履行遅滞」を含む。それゆえ、遅延損害金を約定すれば、その約定に従うことになる。また、民法420条3項は、「違約金は賠償額の予定と推定する」と定め、違約金条項は、損害賠償予定条項として理解されることになる。

 例えば、建築工事請負契約に添付されることの多い、いわゆる、「民間連合約款」においては、その30条1項において「受注者の責めに帰すべき事由により、契約期間内に契約の目的物を引き渡すことができないときは、契約書に別段の定めのない限り、発注者は、受注者に対し、遅滞日数に応じて、請負代金に対し年10%の割合で計算した違約金を請求することが出来る」と定める。これに基づけば、工期遅延に対して、工事代金×遅延日数/365日×10%という方法により計算されることになる。

 当該金額を違約金=賠償額の予定(民法420条3項)とすることは、すなわち、たとえ生じた「実損害」が、上記金額に満たなくても、これを超える場合であっても、一律に上記方法により計算された損害が損害額になるということを意味するものである。

 以上から、契約書で損害賠償の予定、または違約金条項があれば、特段の事情がない限り、契約書に基づき損害賠償金を請求することになり、「実損害」の検討ということは意味を成さないことになる。