がん患者が前向きになるために

シンポジウム「がん哲学外来の核心」でパネル討論

2015/05/01 00:00
宮川 泰明=スプール

 順天堂大学 医学部 病理・腫瘍学 教授の樋野興夫氏が立ち上げた一般社団法人「がん哲学外来」。医師による治療ではなく、「がんサバイバー」が同じ立場の人々と触れ合い、情報交換し、笑顔を取り戻すことを目指す。がんサバイバーとは、がんと診断され、治療中または治療後の人のことである。

 2015年4月11日、医療用ウィッグを手がけるスヴェンソンの主催、化粧品メーカーの資生堂の共催により「がん哲学外来の核心」と題したシンポジウムが開催された(関連記事)。同シンポジウムでは、医師やサバイバーなどの立場から5人が登壇してパネルディスカッションが実施された。

「より活動的になれた」

 パネリストとして登壇したのは、国立病院機構 名古屋医療センター 緩和ケア科医長の竹川茂氏、資生堂 ライフクオリティビューティーセンター参事の横山加津子氏、サバイバーの角田万木氏、東京都保健医療公社 東部地域病院 看護師の上杉有希氏、スヴェンソン 名古屋サロン店長代理の長屋隆代氏である。なお、上杉氏はサバイバーでもあり、がん哲学外来ナース部会の代表も務めている。

パネル討論の様子
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 パネルディスカッションのテーマは「メディカルカフェに行くようになったきっかけ、またそこで得た変化」と「企業が医療関係のシンポジムなどの活動に参加することの意味」についてである。

 まず、サバイバーの立場から上杉氏と角田氏が話した。上杉氏は樋野氏の「解決はできないけど解消はできる」という言葉を引き合いに、自身の経験を振り返った。家族にも話せない不安に思っていることをメディカルカフェで話すうち、気持ちが落ち着き、この活動をもっと広げていきたいと感じたという。一方、角田氏は、メディカルカフェに行くのを楽しみにするようになって「がん治療を受ける前より活動的になれた」と語った。

「せっかく銀座に行くのだから」

 スヴェンソン名古屋サロンの長屋氏はメディカルカフェの会場を提供する立場からコメントした。医療用ウィッグは販売したら終わりではなく、顧客とはサポートなどで治療期間ずっと付き合うことになる場合もあるという。そこで同じ悩みを持った人との交流の場がほしいという要望が多く寄せられ、メディカルカフェを開くきっかけとなった。カフェではウィッグの相談だけでは聞けない話も多く、そこから得たヒントでサバイバーをよりよくサポートできるようにしていきたいとした。

 共催の資生堂は化粧品メーカーで、がん患者のケアと関わりが薄そうに思える。メディカルカフェにも直接は関わっていない。こうした中、横山氏は「これまでもがん患者へメイクのアドバイスをする活動を行ってきた」と語った。

 がんに罹患したり、治療の経過で外見に変化が現れたりすると外出しなくなってしまうケースが多い。外出できないと、気持ちが落ち込みやすくなる。そこで2014年に公開講座を東京で開催した際は、あえて心理的なハードルが高そうな銀座を選んだ。「せっかく銀座に行くのだから」とおしゃれをして、外出すること自体を楽しんでほしいという思いがあったためで、応募者からも「楽しみでわくわくしている」というコメントがあったという。メイクをきっかけに気持ちを上向きにし、がんと向き合って前に進めるようになる手伝いをしていきたいとした。

 基調講演も行った竹川氏は、サバイバーがメディカルカフェに関わることにより、自分より苦しんでいる人に何かしてあげたいと思うことで自分自身も前向きになれるとした。また「病院での指導では行き届かない部分も出てきてしまうため、企業の支援が受け皿になり、治療中のセルフケアなどについて患者に伝えてもらえるとありがたい」と語った。メディカルカフェのような活動が広がり、やがてがん患者への支援が話題にもならなくなるほど当たり前となる社会になってほしいと結んだ。