iPadを用いて問診・検査情報、検体情報の発生源入力を実現

 NCNPバイオバンク情報管理システムの開発を担当したのは、メディカル・ゲノムセンター バイオリソース管理室の松村亮氏だ。臨床心理士で、システムエンジニアでもある同氏は、3年ほど前に脳脊髄液研究用データベースをFileMakerプラットフォームで構築した経験があり、そのノウハウを生かしてNCNPバイオバンク情報管理システムの構築でもFileMakerを採用した。バイオバンク情報管理システム特有の課題について松村氏は次のように話す。

メディカル・ゲノムセンター バイオリソース管理室の松村亮氏

 「バイオバンク事業を行っていく中で、検体の種類や分注方法、収集・管理する情報などの追加や変更、あるいは運用ルールが当初のシステム仕様設計から変わることが想定されました。そのためシステム会社へ委託して開発した場合、仕様変更による開発コストを見込み確保できず、途中で開発が破綻することも想定されました」。

 そうした状況の中、仕様変更やニーズの変化に柔軟に対応でき、迅速なソフト開発が可能で、コストを抑えて構築できるFileMakerプラットフォームでの開発が決まった。さらに、バイオバンクスタッフ(臨床心理士)が、問診や症状評価などの情報を聴取・検査しながら入力するためにタブレット端末の利用を検討していたことから、無線ネットワーク環境で安全にデータ暗号化通信が可能なアプリFileMaker Goが稼働するiPadを選定したという。

FileMakerを利用して構築したNCNPバイオバンク情報管理システムのメニュー画面
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 iPad(FileMaker Go)を用いた問診・症状評価情報の登録は、主にNCNP病院の病室で患者さんからの情報聴取と症状評価検査を実施しながら行われる。FileMakerで作成されたMINIやHAM-Dなどの症状評価ツールは、対面しながらiPadで容易に入力できるように工夫されている。入力された情報はリアルタイムでNCNPバイオバンク情報管理システムのFileMaker Serverに格納される。「収集した情報はFileMaker Go 経由でFileMaker Server へ送信されるため、iPad内部に情報は残らず、また紙媒体からの入力を必要としないため、個人情報保護や入力負担の軽減にも貢献しています」(松村氏)。

NCNP病院の病室でiPadを用いて行われる問診・検査(再現写真)
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うつ症状の重症度評価検査を行うiPad画面
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