神戸物産の沼田昭二CEO
(撮影:日経BP)

メガソーラー(大規模太陽光発電所)の運用には、未知の部分が多く残っている。20年間の売電期間中に、どのような劣化やトラブルが生じるのか、誰も経験したことがないからだ。こうした状況に対して、業務用の食品スーパーをフランチャイズ展開する神戸物産が、太陽光パネル単位で発電や劣化の状況をリアルタイムで監視するなど、リスクを早期に把握する取り組みを発表した(関連ニュース1同2)。前回に続き、その背景や狙いを、神戸物産の沼田昭二CEO(最高経営責任者)に聞いた。

――太陽光パネル単位で発電状況や“健康状態”を、遠隔監視でリアルタイムに把握するシステムは、今後、どのように展開していく予定ですか。

沼田 まず、5月をめどに、現在、運用しているメガソーラーに後付けで取り付けはじめます。出力2MW以上のサイトには、すべて導入する予定です。

 発電量、電圧、温度をリアルタイムに計測するもので、温度などは閾値を設定し、それを超えた場合に、自動で無線送信します。季節ごとの違いに合わせて、閾値は遠隔制御で設定できるように開発を進めています。

 これまでに建設・運用してきたメガソーラーは、最大でも出力2MWクラスでした。しかし、今後は出力10MW以上の大規模なプロジェクトも着工を控えています。

 例えば、宮城県仙台市で36MWを2カ所、48MWが1カ所、合計出力120MWのメガソーラーを隣接して建設する予定です。このほか、宮城県東松島市で出力30MW、福島県西白河郡で出力17MW、大阪府岬町で出力12MWといった計画が控えています。

 特別高圧送電線に連系するメガソーラーでは、送電線内に受け入れ可能な容量や、連系点までの送電が課題となります。そこで、神戸物産が計画している特高案件は、すべて特別高圧送電線の変電所の隣接地に立地します。

 こうした特高に連系するプロジェクトでは、建設当初からパネル単位の監視システムを導入したいと考えていました。投資額が大きく、不具合が起きた時の損害も大きくなる可能性があるためです。

 パネル単位の遠隔監視システムが実現できなかったら、特高に連系するメガソーラーの開発を中止しようと考えていたくらいです。

 出力1MWあたりの投資額は、一般的に約3億円と言われており、出力10MWならば約30億円、出力30MWならば約90億円を投じることになります。それほど大きな投資なのに、パネルの劣化を早期に把握できず、発電のロスが放置され、5年後の点検でようやく気づいて交換しました、という状況は、どうしても避けたかったのです。