太陽光発電所の建設を巡っては、発電開始までのトラブルに注目しがちであるが、発電開始後にトラブルが発生する例もある。その代表的な例の1つに、「高調波等の発生」を巡るトラブルがあろう。太陽光発電所の開業後、近隣住民より、「電灯がちらつく」などとしてクレームが入り、顕在化していくことが通常である。

 このような場合、まず、対電力会社の問題として、パワーコンディショナー(PCS)の交換を要求され、応じなければ系統連系を切断されてしまう場合もある。再エネ特措法においては、このような問題について解決するための規定が、明示的には存在していない。それでも、このようなPCSの交換要求に応じる法的義務があるのであろうか。

 実は、このような対応が求められるのは、接続契約に定める条項が一根拠となる。接続契約においては、電力会社により表現が異なるものの、以下の様な条項が入っているのが通常である。

 「甲は、甲の発電設備の運転に起因する電圧フリッカおよび高調波等の発生により、乙の電力系統ならびに乙が電力供給または託送供給する甲を除く他のお客さまの設備に悪影響を及ぼさない。」(※甲=発電事業者 乙=電力会社)

 この様に、直接的には契約上の条項に基づき、発電事業者は、PCSの交換要求等に応じる法的責任が生じるのが通常である。

 当然、PCSに問題があるのであれば対応すべきはやむを得ないところである。ここで、注目すべきは、「高調波等の発生により・・・他のお客さまの設備に悪影響」が生じた場合には、発電事業者の責に帰すべき事由の有無を問わず、責任が生じるという点であろう。

 中には、近隣の電力需要者(他のお客さま)の建物側の受電設備の老朽化などにより、悪影響が生じている場合もあると思われるが、このような場合でも、結果として発電事業者側の対応が求められる傾向にあるので注意が必要である。

 このようなリスクを回避するためには、電力会社に対し接続契約に関する条項の修正を要求することも考えられる。もっとも、接続契約締結のタイミングで電力会社側に条項の変更を要望しても、結果として変更に応じて頂くことは困難であると思われる。本条項については所与のものとして対応せざるをえないのが現状であろう。