前回の記事から続く

 次に、「医師の仕事」という切り口から未来の医療の姿を考えてみる。

 医師の仕事は主に4つに分かれると考えられる。すなわち、「診察」「診断」「研究」「治療」である。今後、これらの仕事の一部は、情報システムに置き換わっていくだろう。

 具体的には、診察は「センサー」で置き換えられる。もちろん、人(医師)でしか取得できないデータもあるので、すべてが置き換えられるわけではない。センサーと人で仕事の分担が起きるのだ。

 診断と研究はコンピューター化が進むと考えられている。米国では、米IBM社が開発する質問応答システム「Watson」を用いた自動診断などを引き合いに出し、「もう内科医はいらない」というセンセーショナルなタイトルの記事が話題となった。そんな時代なのである。つまり、診断は「CPU」で行われ、研究は「KDB(knowledge data base)」に蓄積される時代になったのだ。もちろん、その処理を行うためのKnowledge(知識)と判断ルールを与えるのは、医学研究者の仕事である。

 CPUがするべきだと判断した処理を実施するのが治療である。つまり、治療は「アクチュエータ」の仕事だといえる。「アクチュエータ」として医師が果たす役割は多岐に渡る。実際に手術を行うのも医師の仕事であるし、CPUが与えた情報を患者に分かるように翻訳して伝えるのもまた医師の仕事である。ここでも医師の仕事のすべてが置き換わるのではなく、テクノロジーと人(医師)、あるいは、人と人(別の医師)の間で仕事の分担が起きるのだ。

黒田氏の資料から
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