連載最終回となる本稿では、前回に引き続き、HEV向けシステムを構成する主要部品について取り上げ、電源システムと高電圧補機システムに焦点を当てる。前者では電池やDC-DCコンバータなど、後者では電動コンプレッサや電動ウオーターポンプなどについて述べる。最後に、本連載のまとめとして、カー・エレクトロニクスの課題や将来動向などについて解説しながら、21世紀のあるべきクルマの姿について展望する。

 ハイブリッド車(HEV)の電源は、主電池とその冷却装置、電池を監視する電池監視ユニット、高電圧を機械的に投入遮断するシステム・メイン・リレー、突入電流防止用のプリチャージ・リレーとレジスタ、電池への入出力電流を検出する電流センサなどで構成される(図1)。

図1 HEVの電源構成
電池パックやDC-DCコンバータ、昇圧コンバータ、インバータなどから成る。
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主電池に求められる要件

 以上に挙げたものを一つのケースに収めている場合、電池パックと呼ぶ。また、12V電池に電力を供給するため、従来のオルタネータの代替としてDC-DCコンバータを用いる。

 HEVに搭載される主電池の重要なポイントは、大きく四つある。

 第1はサイクル寿命。HEVでは頻繁に充電/放電を繰り返す。鉛蓄電池はサイクル寿命が短いため、寿命が長いNi水素2次電池やLiイオン2次電池が主流となっている。

 第2はエネルギー密度。燃費や走行距離の観点から、小さくても大きなエネルギー量を持つ電池が必要となる。エネルギー密度の観点では、Liイオン2次電池が最も優れている(図2)。

図2 各種電池の体積当たりのエネルギー密度と出力密度
Liイオン2次電池が最も優れていることが分かる。
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 第3は出力密度。より優れた加速性能を得るには、大きな出力を出せる電池が必要である。この点でもLiイオン2次電池は優れているが、Ni水素2次電池も大幅な性能向上が図られている。

 第4は安全性。万一の事故や過充電/過放電によって、電池が発火しないことが求められる。従って、車両側のパッケージの工夫や制御による保護系システムを組み込む必要がある。