講演する尾形氏
講演する尾形氏
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 東京大学 政策ビジョン研究センター 健康経営研究ユニット 特任教授(九州大学 名誉教授)の尾形裕也氏は、2015年3月19日に開催された健康経営フォーラム主催の特別シンポジウム「~健康経営2.0 新たな企業価値創造の時代~」に登壇。「日本における健康経営の可視化に向けた試み」をテーマに講演した。

 尾形氏はまず「健康経営」という概念について、似た言葉である「環境経営」ほどには市民権を得ていないと指摘した。同氏によれば、欧米では1990年代以降、企業経営と医療・健康問題に関して考え方の大きな転換が起こりつつある。従来の「疾病モデル」は、病気になったときにそれに対応して医療費を払うという考え方。それに対し最近は、「生産性モデル」への転換が叫ばれている。これは人的資本への投資による収益の最大化を目指す考え方。英語でいえば「Health and Productivity Management」だ。この考え方こそが「健康経営に他ならない」。

コラボ・ヘルスが鍵を握る

 この考え方を進めるにあたり、日本は皆保険制度を取っているため実は「欧米諸国よりも有利な立場にある」と同氏はみる。カギを握るのは保険者と母体組織で、「コラボ・ヘルス」(協働で取り組む健康づくり)をどう実現するかだという。

 安倍政権における3本の矢の一つ、「日本再興戦略」における「戦略市場創造プラン」には、「国民の健康寿命の延伸」が掲げられている。同氏はこのうち特に重要なのは「予防・健康管理の推進に関する、新たな仕組み作り」だとし、その一環に「データヘルス計画」があることを説明した。データヘルス計画とは、電子化し蓄積されてきたレセプトや健診データを活用した、健康増進のための取り組みを指す。