本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第118巻第1154号(2015年1月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

当社での3Dプリンターの導入

 三菱重工業では2000年からガスタービンの開発・製造に3Dプリンターの活用を開始した。当初は造形メーカーに3D-CADデータを送付し造形していたが、コストが高く時間がかかるため、造形対象を最小限に抑える必要があった。やがて社内で3Dプリンターの有意性が確認されるにつれ、より低コスト・短納期へのニーズが増加。2007年に米Stratasys社の「Dimension SST 1200」を導入した。

 設計者が作りたいモデルは開発品であり、高い機密性が必要である。装置を導入したことにより、すべて社内で完結でき、情報セキュリティ確保が可能となった。社内で爆発的に活用が広がり、さらに精度良く薄物を造形したいというニーズも生じたため、米3D Systems社の「ZPrinter 650」を導入した。

 一方、性能試験などの用途でガスタービン部品などの大型造形物を精度良く一体造形するニーズもある。そのため、Stratasys社の「Fortus 900mc」を導入した。

開発リードタイム短縮・開発コスト低減

 ガスタービン開発における3Dプリンターの利点として、設計形状を早く正確に製造で確認できる点が挙げられる。3D-CADデータになじみが薄い製造現場では、これまで図面ができた後でしか設計形状を確認できなかったが、3Dプリンターを用いることで3D-CADデータ作成の翌日にモデルを手に取って確認できる。タービン翼のような複雑な内部構造も形状確認が容易となり、早期に製造性の検証が可能となる。

 また3Dプリンターは縮尺を容易に変更できるため、数メートル、数十トンもある車室の加工性を机上で検討し、加工上の懸念事項を設計と協議し早期に課題解決を図ることも可能となる。このように3Dプリンターにより設計・製造がコンカレントに作業でき、ガスタービン開発における期間短縮と開発時点からの製品品質の作り込みが可能になる。