今回は、「SEMI China」が2014年末に発表した中国FPD産業10大ニュースのうち、産業動向に関する2件について紹介する。中国政府が液晶パネル関税撤廃に反対した件と、台湾タッチパネルメーカーの大手Wintek社(勝華科技)が会社更生手続きをした件である。液晶パネル関税撤廃反対は、中国国内FPD産業の保護が目的である。これに対してWintek社の件は、中国国内サプライチェーンに大きなダメージを与えた内容である。

WTOのITA2交渉決裂、
中国が韓国の液晶パネル関税撤廃提案に反対

 世界貿易機関(WTO)の情報技術協定拡大交渉(ITA2)は、韓国の液晶パネル関税撤廃提案に中国が反対したことで、2014年12月12日に決裂した。1996年に締結されたITAの対象品目の拡大に向けて、54カ国の代表者がスイス・ジュネーブの世界貿易機関で1週間にわたり交渉していたが、中韓の液晶パネル関税撤廃に関する意見の相違によって、結局合意に至らなかった。

 中国が反対した理由は、半導体や液晶パネルなど、まだ国際競争力の弱い重要産業を保護しなければならないことを国内に向けて発信する必要があるためである。中国は現在、様々なデジタル製品を世界市場に輸出しており、デジタル製品にかかる関税の撤廃によって多くの利益を獲得できると見込まれている。しかし、ディスプレーに関しては、先に紹介した「新三年行動計画」でも打ち出しているように、国の施策のもとで発展させていきたい重要産業と位置付けている。韓国や台湾などに対して十分な競争力を持つまでは保護していきたい領域である。

 もしITA拡大交渉が妥結された場合、ITAの対象品目にさらに多くのハイテク製品が追加されることで、毎年150億米ドルの関税を削減し、世界で数十万の雇用機会を創出することができると言われていた。結果として、米国のオバマ大統領が2014年11月に中国を訪問し、ITA拡大交渉で中米が合意したことも水の泡となった。