このシリーズでは、中部電気保安協会の本店 保安部 太陽光プロジェクトチームによる、太陽光発電システムのトラブル事例や、それらのトラブルへの対応策、所属する電気主任技術者にどのように助言しているのかについて紹介している。

 太陽光発電所におけるトラブルとして、最近は送電ケーブルの盗難が増えてきています。ニュースなどで報じられ、見聞きした方も多いかもしれません。

 銅線の取引価格が高騰していることが背景にあります。太陽光発電所では主に、パワーコンディショナー(PCS)からの送電を担う、交流変換後の出力側の送電ケーブルが盗まれる事件が起きています(図1)。

図1●PCSから出力後の送電ケーブルの盗難事件が相次ぐ
写真は建設中の太陽光発電所の例。盗難事件の被害に遭った発電所とは異なる(出所:日経BP)
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 滋賀、奈良、京都などの関西地方に加え、愛知や岐阜といった、中部地方の西寄りの地域を中心に多発しています。

 被害に遭った太陽光発電所の中には、中部電気保安協会が保安点検業務を受託している発電所もあります。愛知、岐阜、三重にある顧客の太陽光発電所で、数件の事例が出てきました。

 送電ケーブルが盗まれても、遠隔監視システムがない場合、盗難に気づく機会は点検時くらいしかありません。場合によっては、点検の周期である6カ月間、気づかない恐れさえあります。

 遠隔監視システムが導入されている太陽光発電所であれば、発電量の状況やPCSの警報などから、何らかの異常の兆候を把握できる可能性もあります。

 中部電気保安協会の遠隔監視システムを使っている太陽光発電所が、送電ケーブルの盗難に遭った場合、現在は侵入や盗難を直接、監視していないので、発電量の有無や、警報の表示の確認などによって、状況の把握と早期の対応に努めるとともに、今後、協会としてどのような対応が可能なのか、検討していきたいと考えています。