空気圧駆動を用いた手術支援ロボットシステムの研究・開発を行う東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 教授の川嶋健嗣氏。同氏は、2015年2月8日に神戸市で開催された「第5回神戸医療イノベーションフォーラム」に登壇、動物実験や模擬臓器を使った実験で同ロボットシステムの操作性の改善を行っている段階であることを明らかにした(第5回神戸医療イノベーションフォーラムの関連記事1関連記事2関連記事3)。

川嶋氏
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術者が感触を得られる

 実用化されている内視鏡手術支援ロボットとしては「da Vinci Surgical System」、通称「da Vinci(ダビンチ)」が有名だ。しかし、操作を内視鏡からの画像情報に頼っており、鉗子マニピュレータの触った感覚が術者には伝わらないことに課題がある。

 これに対して東京医科歯科大学の川嶋氏らの開発は、スレーブ側の鉗子マニピュレータに空気圧駆動を採用して術者に感触を伝えるコンパクトな遠隔手術支援ロボットシステムだ。同氏は「空気圧の圧縮性を利用したことで、臓器をつかんだときの強さ、縫合糸を引っ張った感触を術者へ伝えることを実現した」と、その駆動方式の革新性を強調した。

 現在、動物実験や模擬臓器を使った実験で操作性の改善を行っている段階だという。「ゴム製の模擬臓器を用いて胆管と小腸をつなぐことをイメージした胆管空腸吻合の実験では、吻合する臓器の後ろ側から針を引っかけるときなど、引っ張る感覚が得られるため圧倒的に操作しやすく、吻合(操作)時間も短縮することができる」(川嶋氏)。