患者のメンタルにビッグデータは使えるのか

 次に徳島県医師会の医師が、「患者のメンタルな部分はビッグデータでつかめるものなのか」という質問を投げかけた。これに関しては石川ベンジャミン光一氏が、「現状でビッグデータとして整っていて、メンタルな部分に使えるものはほとんどない」としながらも、某企業が職場の幸福度ないしは組織活性度を図るためのデバイスを開発したニュースに紹介。既にビッグデータを集積して、精神状態を評価する研究が始まっていることを示した。

国立がん研究センターの石川ベンジャミン光一氏
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 最後は地域医療構想におけるビッグデータの取り組みについての質問が飛んだ。これには山本隆一氏が「地域医療構想等に係る医療法の改正で、データに基づいて医療計画を作るということになっており、厚生労働省の中でガイドライン策定委員会が設立された。現在は詳細をガイドラインにまとめている最中だ。ナショナルデータベース(NDB)についても地域医療計画で使ってもらえるように各都道府県に対して、申請があれば使い方の講習を含めてデータを提供することになっている」と回答した。

 また、石川ベンジャミン光一氏はその回答に重ねるように「究極的には2025年の地域の医療提供体制をどのような形にするのかが重要になる。データが全てではなく、データの先にある議論と医療従事者の思い、目標がこれから問われるのではないか」と述べた。

 ディスカッション終了後は、日本医師会副会長の松原謙二氏が閉会の挨拶を行なった。「患者の命と健康を守り、幸福にしていくために、ビッグデータを手段として用いるのが我々の使命。患者の最も大事な要素である個人の秘密が漏れないようにしながら、公のために使っていく」と宣言して、今回のシンポジウムを締めくくった。