本記事は、日経WinPC2013年3月号に掲載した連載「PC技術興亡史」を再掲したものです。社名や肩書などは掲載時のものです。

 SDRAMがPC向けメモリーの主役の座を勝ち取ったのは1998年に入ってからだ。しかし2000年には、その位置は早くも危うくなる。CPU性能の向上に追い付けず、帯域が不足したからだ。代わる候補はRambusが開発し、Intelがライセンスを受けて普及させようとした「Direct RDRAM(DRDRAM)」と、2社以外が取り組んだ「DDR SDRAM」である。

 中でもVIA Technologiesは、Intel製CPU向けにDDR SDRAMに対応した互換チップセットをいち早く発売。やや遅れたが、AMDも全面的にDDR SDRAMに対応した。チップセットメーカーやメモリーメーカーがこぞってDDR SDRAMに対応した結果、量産効果が働いて価格が下がり、2001年にはDDR SDRAMがメモリーの主役となった。対するDirect RDRAMは価格の高さや性能の低さに加え、製造上の難しさなどがあったため、普及には至らなかった。

2つのエッジで転送
2組のメモリーセルを保持

 DDR SDRAMの正式名称はDoubleData Rate SDRAMである。データ転送速度を倍増したという意味だ。これを実現するために2つの技術が採用された。一つはダブルエッジでの転送である。従来のSDRAMは、クロック信号の立ち上がり(L→Hに切り替わる)のタイミングでコマンドを指定したり、データを転送したりする(図1)。これに対してDDR SDRAMでは、クロック信号の立ち上がりと立ち下がり(H→Lに切り替わる)でデータを転送する(図2)。実際には、ロジック回路の構成上、立ち下がりのタイミングに合わせるのは難しい。そこで、クロックの位相を反転させた信号も一緒に供給する。これでデータは2倍の速度で転送できる。

図1 前回紹介したように、SDRAMはクロックに同期してデータを読み出す。データはcolumnアドレスを指定してからCL(CAS Latency)に対応したタイミング以降に取り出す。
図2 DDR(Double Data Rate)の名の通り、読み出しを2倍にした。具体的にはクロックの立ち上がりと立ち下がりのタイミングでデータを読み出すことで、2倍のデータレートを実現している。