医療におけるデータ活用の重要性やプライバシー保護の必要性、現状の問題点はどこにあるのか――。2015年2月12日に開催された平成26年度 日医総研シンポジウム「日本における医療ビッグデータの現状と未来」において、東京大学大学院 医学系研究科 医療経営政策学講座 特任准教授の山本隆一氏が「医療情報大規模データベースとプライバシーの保護」をテーマに講演した。

 山本氏はまず、死因別にみた死亡率の推移グラフから「1947年と比較して、近年は長い経過の病気が増えた」ことを示し、医療と健康に関するさまざまな情報が「人の生涯を通じて膨大に生じている」ことに触れた。しかし、その膨大な情報も、紙とそろばんしかない人力の時代では適切に扱うことができない。そのため、それらの情報は「消えていく」あるいは「本人もどこにあるかわからない」という状況だったという。

東京大学大学院 医学系研究科 医療経営政策学講座 特任准教授 山本隆一氏
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 しかし、こうした状況はコンピュータの登場によって大きく変化し、分析した情報をさまざま分野に活用することができるようになった。山本氏は、従来であれば蓄積できずに捨ててきた情報を「しっかり活用して新しい価値を見出すこと」が今の時代のキーワードであり、それこそが「データ指向時代と呼ばれる由縁だ」と説明した。

 このような変化に伴って、「日本でも医療関係のデータベースができ始めている」と山本氏は語る。例えば、厚生労働省が整備したレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)や医薬品の安全対策等における医療関係データベース(MID-NETプロジェクト)、国保データベースKDB、介護認定データベースなどが作られており、自然言語解析などの技術を用いることで、さまざまな活用が期待されている。