欧州企業は国際標準化に積極的だ注1)。例えば、GSMに代表される2G以降の移動通信の規格、車載エレクトロニクスの制御系システムの規格である「AUTOSAR」、そして最近では産業システムのネットワーク化に関わる「Industrie4.0」といったものが挙げられる。さらに、欧州のリーダーシップと競争力を確立するために、ICTやエネルギーなどを中心に、経済・社会や産業全般に大きな影響をもたらしうる分野を中心に標準化が進められようとしている注2)。
注2)最新のプライオリティーや重点産業分野は、COM(2014)500に詳しい。以下の資料や情報は、http://ec.europa.eu/index_en.htmのサイトを通じてアクセス可能である。標準化の狙い、利点、課題は、Ref.Ares(2014)917720(ECSIP(European Competitiveness and Sustainable Industrial Policy)Consortium, Patents and Standards, A Modern Framework for IPR-Based Standardization, European Union, 2014.))に整理されている。
一方、我が国においては、多くの日本企業が国際標準化にためらいを感じているようだ。「標準化が本業の売り上げや収益とどう結びつくのか分からないのだが、どう対応すればよいか」という疑問は、企業関係者と標準化への対応について議論している際に、少なからず耳にすることである。
積極的に標準化が推進される欧州と、標準化の意義を見出せない日本。なぜ欧州企業は標準化を積極的に推進するのか。また、なぜ技術の公開を伴う標準化を進めながら、欧州企業は競争力を維持できるのか。欧州型の標準化戦略に死角はないのか。産業や分野により標準化の進め方や知財の取り扱いについての違いはあるが、本稿ではこうした点を欧州型の標準化としてまとめて考えてみたい注3)。