視点1:工程能力を正しく把握しているか

 図面の公差は、製造現場の実力を把握しなくては本来、決められないはずだ。公差内で部品がどのようにバラつくのかを想定しつつ、そしてアセンブリ全体の目標品質を最小コストで達成できるように公差を設定することが大切になる。工程能力をきちんと把握しないで決められた公差は、さまざまなトラブルの原因となる(図1)。以下、その例を説明しよう。

図1●公差と工程能力
同じ公差(規格幅)でも、工程能力によってその評価は変わる。規格幅の中で部品がどのようにバラつくのかを想定しつつ、工程能力に見合った公差を設定することが大切になる。
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 まず、公差が厳しすぎればどうなるか。つまり工程能力が不十分な状態なので、不良品の発生は多くなる。検査によって不良品を排除することは可能かもしれないが、歩留まりが悪いのでコストは高くなる。工程能力を高めようと、加工条件を工夫したり、後加工を追加したりするような取り組みもコストアップの要因だ。

 近年の製品は小型化しつつ、部品の高密度化が進んでいる。そのような製品を設計するには、公差に入っている部品であればどれでも組み付けられるという考え方は適用しにくい。各部品に非常に厳しい公差を設定しなければならなくなるからだ。現実には、設計で厳しい公差を設定しつつも加工では完全に対応できず、組み立ての際に調整などが行われている。従って、製造現場の作業者に調整能力がなくなったり、海外の工場などでの組み立てに移行したりした場合には破たんする可能性が非常に高い。

 そこで、各部品の公差を統計的な考え方で積み上げてアセンブリの公差を計算する方法が有用となる。ただし、この方法では検査で不良品を排除するという対策は採用できない。公差内であれば確実に成り立つという計算方法と違い、良品の中のバラつき方(工程能力)が重要な意味を持つからだ。つまり、公差の上限/下限に近い部品が数多く残ってしまい、アセンブリを組み立てられないケースが増えてしまう。