のっけから恐縮だが、下の動画をご覧いただきたい。ドイツのシステムキッチンメーカー、Nobilia社の紹介ビデオである。同社はドイツ政府がIndustrie4.0を通じて強化したいと考えている中堅製造業の1つだ。Nobilia社の年間売り上げは約1300億円、従業員は2500名。1人あたりの売り上げは約5200万円。低価格競争に巻き込まれず、世界相手にビジネスを展開し、高収益を実現している。ドイツ政府にとっては理想的な投資先だろう。

 欧州でも最大規模のシステムキッチンメーカーであるNobilia社は、顧客の希望に基づいて高級キッチン家具を迅速に納品するのに優れている。ビデオからは、生産現場のオートメーション化が、高品質の代名詞としての”Quality Made in Germany”を実現する原動力となっていることがうかがえる。

 だが、ビデオを見て多くの読者は、「それほど斬新には思えない。この程度の自動化は日本だけではなく他国の工場でもある」と感じたのではないだろうか。実際、その通りで、同社の競争力の源泉は製造に加え、見積もりからアフターサービスまで、ビジネスプロセス全体にわたって高品質化と効率化が追求されている点にある。Nobilia社のホームページの企業プロフィールを見ると、自社の特徴を”At the center of everything at nobilia is: quality. In planning. In production. In order processing and customer service.” と表現している。つまり、単純にキッチン家具という製品の品質だけではなく、注文時のコンサルテーション、仕様変更への対応とレポート、納品後のアフターケアなどといった顧客対応も含んだ全体的なサービスの品質を追求している。

 実際にホームページに入ると、コンフィグレーション機能にある簡易的な3次元CADを使用することで顧客はイメージを膨らませられる。この設計を基に注文が行われ、生産指示、生産、出荷へと繋がってゆく。この背後には、全ビジネスプロセスを結合させる先端的なICTシステムの存在があるはずだ。