一昔前まで、宇宙といえば、米国のアポロ計画や、スペースシャトル計画など、国家的事業であった。しかし、今やElon Musk氏率いるベンチャー企業出身の米Space X社(Space Exploration Technologies社)がNASAからの委託や商用でロケットを打ち上げたり、日本でもロケット民営化を受け、三菱重工業がJAXAからの委託や韓国企業などからの委託で商用でロケットを打ち上げたりする時代となった。大学の研究室や民間企業が、超小型の人工衛星を打ち上げる動きも活性化してきている。

 この背景には、冷戦構造の崩壊などによって、宇宙技術が軍事目的から商業利用目的へと転じたことや、産業育成のために各国が競争政策を推し進めたこと大きい。特に米国では商業宇宙打ち上げや商業リモートセンシングの法規制の整備、国際宇宙ステーションへの物資輸送の民間委託など政府の宇宙活動の民営化などが実施されている。欧州では、宇宙産業界での技術力の差が契約獲得数など競争力の不均衡さをさらに拡大してしまわないよう、「公平な償還の原則」という産業全体を育成する政策を導入した。日本においても、宇宙基本法が2008年に制定され、また2015年1月9日に新宇宙基本計画が決定され、宇宙産業の技術力および国際競争力の強化のための取り組みが進んでいる。そのような取組みの結果として、事業リスクが低下し、宇宙関連事業への参入障壁が下がった。

 ただし、日本の宇宙関連産業は欧米と比較して、国家プロジェクトへの依存が強く、特に打ち上げ設備や衛星、ロケットなどのインフラに関わる部分のパイの大部分は三菱重工業や三菱電機、NECといった大手の宇宙関連企業が占めているのが現状だ。他の産業の例にみるように、やがて欧米の波が日本に影響を与えることを考えれば、閉鎖的な日本の宇宙ビジネスは、新規参入チャンスが今後広がると見込まれる。

 そこで、本稿では、日本と欧米を中心とした世界の宇宙ビジネスの現状を整理し、そこから日本の宇宙ビジネスにおける課題を抽出し、宇宙ビジネスとしてのチャンスの可能性を提示したい。

図1
図1移り変わる宇宙ビジネス
2000年ごろを境に民間への宇宙ビジネス拡大への波が変わった。
図2
図2 日本の宇宙基本法の概要
民間の宇宙関連事業者の促進などが盛り込まれた。