講演する畑中氏
講演する畑中氏
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アンダーカットを光造形で再現

 開発に当たって役立ったのが、機械部品サンプルの作製などで同社が培った技術だった。そのうちの1つが、光造形のノウハウ。同社の心臓シミュレーターではまず、X線CT画像のDICOMデータから患者ごとの心臓の3Dデータを作製し、これを基に樹脂製ハードモデル(硬質モデル)を光造形で作製する。

 光造形にはアンダーカット(金型からそのままでは取り外せない形状)を造形しやすいという強みがあり、これがハードモデルの作製に生きた。心臓の構造は「アンダーカットだらけ」だからだ。機械部品などの作製手法としてミリングが一般的だった時期から、いち早く光造形に取り組んできたことが実を結んだ。

 ハードモデル作製後は、心臓の内部形状を再現できる特殊な型を作り、専用のシリコーン樹脂を流し込んで軟質モデルを完成させる。ここに生きたのが、真空注型のノウハウである。真空に近い状態の槽の中で型に樹脂を流し込み、樹脂製品を複製する成型加工法だ。