講演する谷岡氏
講演する谷岡氏
[画像のクリックで拡大表示]

 2020年の東京五輪に合わせた本放送開始への取り組みが進む、8K(8000×4000画素級)の映像、いわゆる「スーパーハイビジョン」。ここにきて、放送よりも先に実用化される可能性が出てきたのが医療分野だ。2014年12月には、8K映像を用いた内視鏡手術が初めてヒトに適用された(関連記事1)。8K内視鏡の開発を主導するメディカル・イメージング・コンソーシアム(MIC)は2017年の実用化を目指しており、近く事業化に向けた新会社を設立予定という。放送をターゲットに開発が始まった8Kを医療に応用するというアイデアは、どのような経緯で生まれたのか――。

 元・NHK放送技術研究所(NHK技研)所長で、8K内視鏡の“生みの親”であるMIC副理事長の谷岡健吉氏は、「nano tech 2015」(2015年1月28~30日、東京ビッグサイト)の特別シンポジウムに登壇。「医療イメージングはここまできた! 8K内視鏡への期待」と題し、8Kの医療応用への期待を語った。

 谷岡氏によれば、NHK技研が8Kの開発に着手したのは2000年。“究極の高臨場感”を実現する次世代テレビ技術という位置付けだった。4K(4000×2000画素級)テレビが登場した現在では「8Kは4Kとの画素数競争から生まれたと思われがちだが、そうではない。ヒューマンサイエンスに基づき、8Kでなければ高い臨場感は得られないことが当初から分かっていた」。

 ヒューマンサイエンスとは例えばこうした事実のこと。1.0という視力を持つ人は、画角1度当たり60画素を解像できる。高い臨場感(没入感)を得るには100度の画角が必要といい、画角1度当たりの解像度を踏まえるとテレビ画面の水平方向の画素数は6000(60×100)以上でなければならない。これは満たす規格が8Kというわけだ。