本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第117巻第1153号(2014年12月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

 筆者の師匠の畑村洋太郎先生は「機械屋が知らなきゃモグリの重大事故」と呼んで、タコマ橋、リバティ船、コメット号の3つの事故を教えてくれた。それぞれ、機械力学や生産技術の講義中に、教授が必ず紹介している有名な事故である。

[1]タコマ橋

 タコマ橋は、米ワシントン州タコマ市の海峡に架けられた吊り橋である。1940年に完成してから4カ月後、風速19m/秒と弱い横風で上下に自励振動し始め、次いで毎分14サイクルのねじれ振動で橋桁が共振し、最後には落橋してしまった。

 つまり、まず、横風が橋桁の周りに流れて揚力を生み、橋桁は曲げモードで揺れた。さらに渦が舐めるように橋桁の上下面に交互に発生しては流れ、橋桁はねじれモードで共振した。

 事故後に流体振動の学問は大いに発展し、以後、機械屋は流体振動の周波数と構造体の固有振動数を一致させないように機械を設計するようになった。