「今後は間違いなく急成長!デジタルヘルスの注目分野について」――。

 2015年1月22日、六本木ヒルズ森タワーで開催されたグリーベンチャーズ主催のイベント「Digital Health Meetup Vol.1」。トップバッターとして野村リサーチ・アンド・アドバイザリーの根岸奈津美氏が登壇、冒頭のテーマでデジタルヘルスにおける米国の現状と日本の今後などについて語った。

野村リサーチ・アンド・アドバイザリー 根岸奈津美氏
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「利益が出ていないのに評価されている」

 根岸氏はまず、現在の米国でデジタルヘルスが盛り上がっている背景を説明。具体的には、ITやセンサーなどのテクノロジーの進展に加え、政府が政策としてデジタルヘルスの強化を打ち出していることが挙げられるとした。

 米国では、ジョージ・W・ブッシュ政権の時代から医療データを活用して医療ミスをなくしたり医療費を抑制したりする方向に政策の舵がきられてきた。そして、現在のオバマ政権になると、そこに予算が付いたことで投資が加速したとする。根岸氏は一例として、2006年時点で3割程度だったEHR(electronic health record:主に電子カルテ)の導入率が、予算が付き始めた2009年から上昇し、現在では8割から9割に高まっていることを示した。

デジタルヘルスのインフラとなるEHRの導入率の推移
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 そして、EHR導入率向上など病院側のインフラが整ったことが、デジタルヘルス分野でのベンチャー投資の盛り上がりにもつながっていると解説。根岸氏によれば、デジタルヘルスベンチャーに対する株式市場での期待値は非常に高いという。実際、M&Aで上場したデジタルヘルス銘柄については、「利益が出ていないのに評価されている」(同氏)と述べた。

 同時に根岸氏は、従来型の医療機器企業が新しいデバイス企業を取り込むだけでなく、同業同士の買収も進むなど「黎明期というよりは、さまざまな会社が出そろい整理が進んできている」との印象を語った。