福岡県飯塚市の不動産投資型発電所

アセットマネジメント契約でメガソーラーを運用

2015/01/27 00:00
金子 憲治=日経BPクリーンテック研究所

 福岡県飯塚市は、福岡市と北九州市に挟まれた福岡県のほぼ中央に位置する。市の中心であるJR新飯塚駅は、快速電車で、博多駅まで44分、小倉駅まで58分という利便性で、両政令都市への通勤・通学圏内になっている。

 そんな大都市近郊の新飯塚駅からわずか数km、国道200号線から南側の路地を入ると2つのメガソーラー(大規模太陽光発電所)をほぼ隣接して見ることができる。極東開発工業が、同社・福岡工場内に建設した出力1.5MWのメガソーラー(図1)、そして、投資不動産の企画・開発・建築・販売などを営むウェルホールディングス(福岡市中央区)が建設した出力1.87MWのメガソーラー「ウェル飯塚発電所」だ(図2)。

図1●極東開発工業・福岡工場内に建設した出力1.5MWのメガソーラー(出所:極東開発工業)
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図2●ウェルホールディングスが建設した出力1.87MWのメガソーラー「ウェル飯塚発電所」(出所:日経BP)
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 2つのメガソーラーは、発電事業者が異なるものの、採用した太陽光パネルとパワーコンディショナー(PCS)の製造会社は、たまたま同じになった。パネルは、ソーラーフロンティア製CIS化合物型、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製の500kW機だ。どちらも品質や効率で定評のある国産のトップブランドだ(図3)。

図3●ウェルホールディングスの「ウェル飯塚発電所」。太陽光パネルはソーラーフロンティア製CIS化合物型、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(出所:日経BP)
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アセットマネジメント契約を締結

 ただ、基礎と架台はまったく異なり、両社のメガソーラーに対する考え方の違いが垣間見えて興味深い。極東開発工業のメガソーラーの場合、コンクリート基礎の上に鋼製の架台を設置した正攻法的な手法なのに対し、「ウェル飯塚発電所」では、基礎と架台が一体型のコンクリート2次製品に直接、太陽光パネルを設置した(図4)。

図4●不二高圧コンクリート製のコンクリート製の基礎架台(出所:日経BP)
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 極東開発工業がメガソーラーを建設したのは、工場の海外移転で空いた自社遊休地を活用する目的で発電事業に取り組み始めた(関連記事)。これに対し、ウェルホールディングスは、不動産事業の一環として、メガソーラー開発に取り組んでいる。同社は、「ウェルブライト」を冠した分譲マンションの開発・販売など、不動産活用の企画・開発からアセットマネジメントなど、不動産投資事業の運営管理を手掛けている。

 「ウェル飯塚発電所」は、ジャパン福岡・ペプシコーラ販売(福岡市博多区)の遊休地を賃借し、ウェルホールディングスが発電事業者となって開発したメガソーラー事業だ。竣工後は、グループ会社の九州・アジア・パートナーズ(福岡市中央区)とアセットマネジメント契約を結び、同社が、2013年3月から運用を担っている。

3人のメガソーラー管理担当を置く

 実は、ジャパン福岡・ペプシコーラ販売は、九州・アジア・パートナーズの株主でもあり、以前から福岡営業所に隣接した遊休地の有効活用について相談を受けていた。ウェルホールディングスでは、固定価格買取制度(FIT)が始まった2012年7月以前から、ドイツやスペインでの再生可能エネルギー発電事業について情報を集めており、国内でもFITが導入された場合、不動産活用の1つとして太陽光発電事業に乗り出す準備を進めてきた。

 その後、国内でもFITがスタートした。「ウェル飯塚発電所」は、これを受け不動産活用の手法の1つとして遊休不動産を持つ顧客に提案し、最初に実現したメガソーラーだ。

 EPC(設計・調達・施工)サービスには、国内のメガソーラー建設で先駆的な実績を持つ協和エクシオに委託し、パネルやPCSも実績のある国産メーカー品を採用した(関連記事)。基礎・架台一体型のコンクリート2次製品は、施工性の高さで定評がある。その後、ウェルホールディングスは熊本県津奈木町に出力1.78MWの「ウェル津奈木町発電所」を2013年9月に運転開始したのを始め、複数の案件を進めている(図5)。

図5●熊本県津奈木町に出力1.78MWの「ウェル津奈木町発電所」(出所:九州・アジア・パートナーズ)
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 運用を受託した九州・アジア・パートナーズにとっても、「ウェル飯塚発電所」は太陽光発電所の管理では最初の案件となった。同社は建物の運営管理全般で実績がある。例えば、専門の巡回スタッフが建物や設備を月に1回巡回して目視チェックし、不具合を確認し、補修・修理の見積もりから発注、最終的な修理の完了確認などを担当している。

図6●稼働状況の遠隔監視システム(出所:日経BP)
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 ただ、メガソーラーの運用に関しては初めての経験となる。そこで、まず社内に3人のメガソーラー管理担当者を決めた。サイトへの侵入者を検知し、現場に急行する防犯システムに関してはセコムを採用した。PCSと太陽光パネルの稼働状況の遠隔監視に関しては、コンテックのシステムを導入した(図6)。そのうえで、毎日、朝、昼、夕方に発電量を遠隔でチェックしている。加えて、PCSの停止など異常を検知した場合には、担当者3人と契約した電気主任技術者に電子メールで自動的に通知されるようにした。夏場には雷が多く、これまでに何回か、雷によるPCSの停止があったという。

ヒツジ、ヤギ除草も検討したが…

 こうした遠隔による発電量の監視のほか、毎月1回、サイト現場を実際に訪れ、太陽光パネルやPCSなどの設備を目視で確認している。この時、太陽光パネルの表面に鳥の糞などの汚れがあった場合、霧吹きなどで水をかけてこすり落としているという。ただ、「サイト内には、水道がないので清掃用の水の確保には苦労している。今後、建設するサイトでは雨水タンクを設置することも検討課題」と、九州・アジア・パートナーズの廣瀬英二・営業グループマネージャーは言う。

 除草作業に関しては、稼働1年目の2013年には外部の専門業者に委託した。2014年には、不動産管理事業で委託している協力会社にメガソーラーの除草も頼めることになり、年3回委託し、除草の経費を下げられたという(図7)。シルバー人材などに頼むことも検討したが、作業中に草刈り機で弾かれた石でパネルが割れた場合、だれが責任を取るのかなどの課題があり、見送ったという。

図7●年に3回、人手による除草を実施した(出所:日経BP)
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 今後、除草の手法については、環境影響の少ない除草剤やクローバーの定着なども検討課題という。ヤギやヒツジの放牧も検討したが、近くにこうした家畜を貸してくれる業者が見つからず、見送った経緯がある。「家畜を使うと話題性もあるが、わざわざ自社で飼ってまで取り組むのは難しい」と、廣瀬マネージャーは言う。

 SPC(特定目的会社)ではなく、一般の事業会社が発電事業者となるメガソーラーで、アセットマネジメント契約に基づきメガソーラー全体の運用の委託した例としては、九州・アジア・パートナーズが「九州初」となるという。最初のメガソーラー運用となった「ウェル飯塚発電所」では、「実際に社員が現場を訪れ、管理業務を行うことで必要なノウハウを蓄積する」(廣瀬マネージャー)という。

 同社では、2013年9月より第2号案件「ウェル津奈木町発電所」(1.78MW)の運用も受託しており、今後も、様々な事業者からのメガソーラー受託運用の拡大を目指す計画だ。

設備の概要
名称ウェル飯塚発電所
所在地福岡県飯塚市大字横田669番の70
敷地面積2万6317.55m2
事業主体ウェルホールディングス(福岡市中央区)
出力1.87MW(太陽光パネルの設置容量)
年間予想発電量188万4630kWh
アセットマネジメント九州・アジア・パートナーズ(福岡市中央区)
EPC(設計・調達・施工)サービス協和エクシオ
太陽光パネルソーラーフロンティア製CIS化合物型太陽光パネル(155W×1万2080枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(500kW×3台)
基礎・架台不二高圧コンクリート
遠隔監視サービスコンテック
運転開始2013年3月28日