本記事は、日経WinPC2012年7月号に掲載した連載「PC技術興亡史」を再掲したものです。社名や肩書などは掲載時のものです。

 Ultra ATAは最大133MB/秒まで転送速度を上げたが、フラットケーブルを利用することによる取り回しの不自由さや、2台のHDDを1本のケーブルで接続することに起因する高速化の阻害、配線長の制限などの問題が顕在化してきた。これに対応するため、従来とは大きく異なる接続方式の検討が2000年2月に始まった。Intelが主導して業界団体「Serial ATA Working Group」(後のSATA-IO)が設立され、2000年11月にはSerial ATA 1.0を完成させた。

 この当時Intelは、さまざまなインターフェースをシリアル化することをもくろんでいた。例えば、PCI Expressもその一つである。まずNGIO(New Generation I/O)として1990年代後半から検討を始め、次いで3GIO(3rd Generation I/O)として2001年に大まかな仕様が固められた。この時点でPCI-SIGに既存のPCIの後継規格として認められて2003年の標準化に向けて進んだ。

 Serial ATAとPCI Expressは、どちらもPoint-to-Pointのインターフェースで、8ビット/10ビット変換を利用するなど、物理層レベルでは似ている部分が多い。これは当時Intelが次世代の汎用インターフェースとしてこの方式を開発してきたことと無縁ではない。

 Serial ATAは7本の信号線から成り立っている(図1)。コントローラーとホストを1対1で結ぶ。信号はディファレンシャルで、片方向のみの通信となる。このため送信と受信で2対、合計4本の信号線が必要である。ただこれに加えて、外部からのノイズ対策のためにGND(グラウンド)を3本加えており、これで合計7本となる(図2)。

図1 ATA/ATAPI-5の66MB/秒を実現する際に、信号線の構成が変わった。信号が高速になると、近くの信号線の状態に影響を受けるようになる。「クロストーク」と呼ばれる現象だ。特にIDEで使われていたフラットケーブルの場合、信号線が並んでいたため、周囲の影響を受けやすい。例えば信号線がHigh(1)ばかりで、1本だけLow(0)の場合に、周囲からの影響が集中してしまう(左)。ATA/ATAPI-5では、信号線の間にグラウンド(GND)信号線を挟み込むことによって、クロストークを低減した。
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図2 実際にSerial ATAケーブルの被覆を剥いてみると、2対の信号線(太い被覆線)を挟み込むように細いGNDの配線が配されている。ノイズ対策が主目的。このため、7本のうち3本をGNDが占めている。