本記事は、日経WinPC2012年3月号に掲載した連載「PC技術興亡史」を再掲したものです。社名や肩書などは掲載時のものです。

 HDDが本格的に普及してくると、ST-506はもとよりESDIでも不満が出てきた。一つはケーブルを2種類使うこと。コストアップにつながるし、設置が面倒だ。また転送がそれほど速くない。HDDが急速に高速・大容量化するのにインターフェースが追従できなくなった。

 この状況下、高速・大容量に対応した2種類の規格が登場した。一つがSASI(Shugart Associates System Interface)/SCSI(Small Computer System Interface)、もう一つがIDE(Integrated Device Electronics、後のATA:AT Attachment Interface)である。登場はSASI/SCSIの方が早い。両者は1990年代まで拮抗していた。

  最初にSASI規格を考案したのはShugart AssociatesでDirector of Design Servicesという職にあり、後にAdaptecを設立したラリー・バウチャー氏である。SASIはESDIのプロトコルを充実させ、1本のケーブルでデイジーチェーンでHDDを接続する方式だった。1981年に公開された。

 SASIはShugart Associatesが策定した独自規格だが、ANS(I 米国規格協会)の標準規格として提案した。しかし業界の支持を得られず却下される。その後NCRが参加し、SASIを拡張して、改めてSCSIという名称で提案。これがANSI X3.131-1986として策定された。

 SASIからSCSIに移行する際に機能も拡張されたが、SCSIはSASIとの下位互換性を保っている。SASIに準拠したデバイスはそのままSCSIでも利用できる。日本でもいくつかのメーカーがSASI対応製品を発売したが、いつの間にかSCSIに移行していた。SASIを採用した多くのメーカーが独自形状のコネクターを採用したため、互換性が無い弊害が目立った。一方でSCSIは標準規格化されたことで多くの周辺機器メーカーが参入し、互換性のある製品が投入された。