本記事は、日経WinPC2012年2月号に掲載した連載「PC技術興亡史」を再掲したものです。社名や肩書などは掲載時のものです。

 IBMの「PC/XT」にオプションでHDDが搭載可能となったことで、PCにおけるHDDの歴史は始まった。この時期、主要なHDDメーカーといえばShugart Associates(後にShugartに改称)とSeagate Technologyである。

 アラン・シュガート氏らは1973年にShugart Associatesを設立した。後のSCSIプロトコルの原型となる「SASI(Shugart Associates System Interface)」という規格を作ったほか、1976年に「SA-400」という5インチのFDD(容量は110KB)を出荷したことで知られる。SA-400の寸法は、今で言う5インチベイの2段分に相当する。このサイズを「フルハイト(Full Height)」として、多くのメーカーが倣った結果、業界標準となった。

図1 1980年に発売され、IBM PC/XTのオプションとして採用された。最初のPC用HDDである。このドライブが備えるインターフェースが事実上の標準として、しばらく使われた。

 シュガート氏は1979年、Shugart Associatesを離れ、Seagate Technologyを設立。そこで最初のPC用HDD「ST-506」を出した(図1)。容量は僅か5MBだが、そのインターフェースが業界標準化した点でも意義深い製品だった。Seagateはこの後、PC/XT用に10MBのHDD「ST-412」や、容量を20MBと倍増しながら高さを半分(ハーフハイト、5インチベイの1段分に相当)にした「ST-225」などベストセラー製品を次々に投入してゆく。

 1986年に開発されたIDEが普及するまで、HDD用インターフェースの主流はST-506であった。製品そのものはすぐに市場から消えたが、名前だけは延々と生き残った格好だ。