Liイオン2次電池(LIB)自身の欠陥による事故の確率は、極めて低い。2009年3月に米国フロリダ州で開催された電池の国際学会「26th International Battery Seminar & Exhibit」において、米Sandia National Laboratory(SNL)は、電池自身が原因となる事故の確率は1ppm以下と報告した。電池の安全対策を手掛ける米TIAX LLCは0.2~0.5ppmとし、これは品質管理の手法である「シックス・シグマ(6σ)」で管理し得る限界を超えると述べた。

 1ppmというのは、希有な現象といってもよさそうな確率である。米国で落雷によって1年以内に死ぬ確率は約1ppm。日本で宝くじの1等に当選する確率は0.1ppmとなる注1)。つまり、LIB自身の欠陥による事故確率は、宝くじの1等当選よりも少し高く、落雷による死亡とほぼ同じということになる。LIBには何重もの安全対策を張り巡らせてあるからだ。

注1)日垣隆氏の『世間のウソ』(新潮新書)によると、2004年(平成16年)のデータとなるが、宝くじの販売枚数は7億4000万枚で1等は74本である。従って、1等に当選する割合は0.1ppmとなる。

 ところが、実際のLIBの事故はppmオーダーよりもはるかに高い確率で発生している。事故の多くが、電池自身の欠陥ではなく外的要因によって起こるためである。前述の学会においてSNLは、事故原因のほとんどが圧壊や加熱、過充電などの外的要因であると報告した。

 こうした事実は、意外と知られていない。いまだに電池自身の欠陥が事故の主原因とみる向きは多い。電池工業会は最近、金属片が電池内部に入り込んだ場合に、安全性を脅かさないかを調べる試験方法を提案した。具体的には、捲回(けんかい)された電池素子に金属片を挿入し、圧力をかけて金属片による内部ショートを強制的に起こすというものだ。これによって発熱や発煙、発火などに至らないかを調べるという。LIBの製造工程で金属片などの混入が内部ショートの引き金となり、事故につながっているという指摘を受けてのものだ。