「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)」の最もユニークな取り組みに、「蓄電池SCADA」がある。SCADAはSupervisory Control And Data Acquisitionの略で、装置などの監視・制御システムを指す。蓄電池SCADAは、多数の蓄電池を仮想的に一つの巨大な蓄電池とみなして蓄電・放電させるためのシステムである。世界的に見てもほとんど例がない仕組みで、これを設けることにより、“穏やかなデマンドレスポンス(DR、需要応答)”を実現する。

 電気料金型DRでは、電力会社やアグリゲータが需要家に要請を出して節電を促すケースが多い。ただ、この方法では、節電効果は需要家の行動に委ねられることとなり、供給側が制御することはできない。蓄電池SCADAでは、需要家がすでに所有している蓄電池を監視・制御し、ピーク時には蓄電池から電力を得るようにすることで、電力会社の発電量抑制の確実性を高める。

 プロジェクトには、東芝、東京電力、日立製作所、明電舎、NEC、シャープ、ソニーエナジー・デバイスが参加する(写真1)。東京電力は、「家庭や電気自動車(EV)など、蓄電池が至る所に存在する社会はいずれやってくる。それを考えると、蓄電池SCADAを利用した確実性の高いDRは、電力会社にとって実に魅力的だ。蓄電池が普及する将来に備え、本気で取り組んでいる」と話す。2012年10月から2013年10月まで実施した技術実証で、「需給調整に使えそうなことが見えてきた」(東芝)という。

【写真1】蓄電池SCADAの実証実験
横浜市内にある東京電力の変電所(右下)の隣地を舞台に進めている。(出所:東京電力)