da Vinci Surgical System
da Vinci Surgical System
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 日本でも採用事例が増えてきた内視鏡手術支援ロボット「da Vinci Surgical System」、通称「da Vinci(ダビンチ)」。現状では、2012年4月に保険収載された前立腺がん全摘術への適用が中心だが、対象疾患は広がりつつある(関連記事)。例えば消化器については、2014年9月に胃がん手術への適用が先進医療として承認された。今後、da Vinciの適用は大腸がんや食道がんにも広がり、消化器領域で幅広く利用されるツールになるのだろうか。

 2015年1月10~11日に東京都内で開催された「第49回 日本成人病(生活習慣病)学会学術集会」では、東京大学医学部附属病院(東大病院)から2人の消化器外科医が登壇。da Vinciの使用実績や、今後の技術進化への期待を語った。

直腸がんへの適用に期待

 「プレナリーレクチャーI」には、東大病院 大腸・肛門外科 教授の渡邉聡明氏が登壇。「大腸手術におけるロボット手術の現況と将来展望」と題し、da Vinciの大腸(直腸)手術への適用例を紹介した。

 渡邉氏によれば、ロボット支援手術は結腸がんには有用でないとの報告があることから、大腸に関して適用が期待されているのは直腸がんだという。直腸がん手術では近年、腹腔鏡下手術の採用が広がっており、そのためロボット支援手術には腹腔鏡下手術に対する優位性の有無が問われることになる。それを評価するための比較試験が始まったところだ。

 da Vinciには多くの利点があると渡邉氏は話す。鉗子の動きの自由度が高いことや、カメラ画像を立体(3D)視できること、カメラがアームで安定に固定されていること、手振れ防止機構を備えることなどだ。これらを直腸がん手術にも生かせる可能性があるという。

 例えば、直腸がんの手術では、がん組織や周辺リンパ節の切除に加えて「排尿障害や勃起障害を防ぐ観点などから、細かい神経の処理が重要」(渡邉氏)という。こうしたところに、da Vinciの特徴が生きる可能性がある。現時点で既に、腹腔鏡下手術に比べると術中に開腹手術へ移行するリスクを抑えられるとの報告があるという。