医療情報システム間の連携手法

 エムシスの秋山幸久氏によるランチョンセミナーは「医療データ連携に関する事例とテクニック」と題して、ソケット通信に関するFileMakerと医療情報システム間の連携手法について講演した。

エムシス代表取締役の秋山幸久氏
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 秋山氏はまずデータ連携に関する基礎としてソケット通信を解説した上で、ベンダーによる専用プログラムの開発を必要としないファイル共有におけるデータ連携について述べた。「FileMakerの場合、データ種類がCSVなどであれば簡単に取り込めるが、データ構造の変更ができない。XMLデータだともう一手間必要になる」として、FileMakerで利用できるようにXLSスタイルシートを使ったデータ構造変換の手法を、デモを交えて解説した。

 東京都立広尾病院の山本康仁氏は、「病院基幹システムとFileMakerをxDBCやESS(External SQL Source)で接続して情報を取得するベストプラクティスを考える上で、当院での9年間の実績を踏まえて報告する」とし、ソケット通信のミドルウエアに必要な機能について述べた。

東京都立広尾病院小児科医長(IT推進担当兼務)の山本康仁氏
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 同病院では、EGMAIN-GX、FileMakerで作ったHiPERというシステムを運用している。電子カルテシステムとリアルタイムのデータ連携を行なうことにより、記載、受付、移動などの情報を解析して、主要症候のパターン推移から新型インフルエンザ流行の初期の日付を検知したり、文脈を略語から解析したりして投薬に伴う有害事象を回避するといったことを実現しているという。電子カルテとの連携では、1日14万トランザクションの情報を送受信しており、リアルタイム処理は13系列のミドルウエアで並列処理を行ない、JDBC(Javaによるデータベース接続のAPI)を使ってFileMakerに書き込んでいる。

 山本氏は電子カルテからHiPERへのデータのストリーミングおよびFileMakerから電子カルテへのソケット送信の手法を説明した上で、「ミドルウエアに求められる機能は、病院情報システムという特殊な環境において、分割されたソケットを合成する機能が最低限必要。また、障害時でも影響を及ぼさないバッファー機能が必要であり、非同期化のためのファイル監視などの機能などもパッケージ化され、仕様変更にも柔軟なミドルウエアが必要になる」と述べた。