メガソーラービジネス

「無制限・無補償の出力抑制を無用に恐れない」、太陽光発電協会(JPEA)事務局長・鈴木氏に聞く

<第30回>メガソーラービジネス・インタビュー

2015/01/16 00:00
金子 憲治=日経BPクリーンテック研究所
太陽光発電協会(JPEA)の鈴木伸一事務局長(出所:日経BP)

電力会社による接続申し込みへの回答保留を受け、経産省は系統ワーキンググループ(WG)を設置して接続可能量を決めた。それを超える見込みの電力会社を指定電気事業者とし、「無補償で無制限の出力抑制」の条件の下で、接続を受け入れるという対応で、保留が解除されることになった。同WGのオブザーバーでもある太陽光発電協会(JPEA)の鈴木伸一事務局長に、今回の対応の評価と太陽光発電事業の今後について聞いた。

――再エネの接続保留は、7電力会社を「指定電気事業者」に指定することで、無補償の出力抑制を無制限で認めることを前提に保留が解除されます。無制限に出力抑制されては事業性が成り立たないため、これで再エネの新規開発は難しくなったとの報道も目立ちます。

鈴木 「指定電気事業者制度」によって、無補償で無制限の出力抑制を条件に接続するという仕組みは、接続保留で止まってしまった再エネ普及を、何とか再び前に進めるための対応と理解しています。発電事業者が「無制限の出力抑制」という条件を認めさえすれば、電力会社は、もはや接続申し込みに対して「保留」はもとより、「拒否」できなくなります。同制度の目的は「無制限の出力抑制」ではなく、実質的な接続受け入れを最大化するための戦略的な手段とも言えます。

――保留解除を実現する苦肉の策にも見えますが、ほかに現状を打開する方策はなかったのでしょうか。

鈴木 送電系統に接続しさえすればよい、というわけではありませんが、とりあえず、保留を解除して、接続協議を再開させるには、ほかに有効な手立ては思い当たらないのも確かです。反省すべきなのは、本来、太陽光発電の普及とそれをつなぐ電力系統の対応は、並行して進めなくてはならなかったのに、あまりに早く太陽光発電の開発が進んだために、系統側の対応が後手に回ったことです。いわば片肺飛行のまま突き進んでしまったツケが、今回の混乱の背景です。指定電気事業者制度の適用は、こうした状況の中ではやむを得ない気もします。

出力抑制の実質的なリスクを理解することが重要

――指定電気事業者制度は、「無制限の出力抑制」という負の側面ばかりが強調されて、それによって、系統接続が必ず可能になるプラス面への評価が目立ちません。

鈴木 保留解除までの対応で問題があるとすれば、まさにその点です。「無制限に出力抑制」という条件がつくものの、今回の対応が緊急避難的なものであることや実際には今後、どうなるのかという点の説明がなく、実質的なリスクの解説が足りないのです。

 抑制日が30日を超え、「無制限」が条件というと、売電量が半分以下になってしまうような大幅な出力抑制のリスクをイメージする人もいますが、それは大きな誤解です。経産省の系統ワーキンググループ(WG)で試算した接続可能量の前提は、あくまで「現行ルールのもと」です。ベース電源となる原子力発電の稼働は、再エネの出力抑制を増やすことになりますが、系統WGでは、「東日本大震災前の30年間の稼働数と設備利用率」を使っています。一方で、地域間連系線の活用は、出力抑制を減らす手段になりますが、現行ルールを前提にするため本格的に見込んでいません。

 実際には、原発はある程度、時間をかけて徐々に再稼働していきます。太陽光発電も、「接続可能量」が一気に導入されることはなく、年ごとに徐々に増えます。加えて、電力システム改革が始まれば、電力会社のエリアを超えた系統の広域運用が本格化し、東京電力、中部電力、関西電力の「中3社」の大きな電力系統を活用できるようになります。つまり、接続可能量を超えて、「無補償・無制限の出力抑制」の条件で系統に接続したとしても、大幅に出力抑制されるとは考えられません。

自民党議員でさえ、原発稼働数の前提は「非現実的」

――接続可能量を算定した系統WGにおける原発稼働数の前提には、環境NGO(非政府組織)などが、「非現実的」と批判しています。

鈴木 実は、昨年末に自由民主党の資源・エネルギー調査会・再生可能エネルギー普及拡大委員会の場で、固定価格買取制度(FIT)の運用などに関し、JPEAとしての考え方を説明しました。その席には、経産省の幹部も出席していました。席上では、自民党の議員からも、経産省に対し、「間もなく運転期間が40年に達する原発も含めるのは現実的でない」「電力システム改革によって今後、電力会社のエリアという概念がなくなるのに、電力会社ごとに接続可能量を算出するのは適切なのか」などの意見が出ました。

 「安全を確認できた原発から再稼働する」との方針を掲げる自民党の議員からでさえ、系統WGでの原発稼働数の前提には疑問を持たれています。これに対し、経産省の幹部は、「系統WGによる今回の接続可能量はあくまで暫定値です。電力システム改革などによって状況は変わってきます」などと答えていました。

接続可能量は、「参考値」に過ぎない

――マスコミも含め、「接続可能量が確定した」という表現も、誤解を招きやすいですね。

太陽光発電協会(JPEA)の鈴木伸一事務局長(出所:日経BP)

鈴木 あえて経産省の立場を代弁すれば、指定電気事業者制度を活用するには、接続可能量を「確定」する必要があるので、「暫定値」と強調するわけにはいきません。また、原発の稼働数に関しても、原発の再稼働は原子力規制委員会が決めることなので、経産省の判断で中途半端な稼働数を前提にできません。経産省のジレンマは容易に想像できます。

 結果的に原発の稼働数や実際の太陽光の導入量、そして地域間連系線の活用方法など、今回の系統WGの接続可能量の検討は、変数が大きすぎて、実際にどうなるのかが見えなくなってしまいました。今回の接続可能量は、経産省でも「暫定値」と言っていますし、JPEAでは「参考値」に過ぎないと考えています。

――では、実際に、出力抑制は、どの程度になると見ていますか。

鈴木 風力と太陽光の電力供給に占める割合が20%を超え、無制限の出力抑制を導入したスペインでも、実際の出力抑制は約2%です。日本でも、今後、日単位から時間単位の出力抑制にすることも含め、今回の接続可能量を超えて接続した場合でも、実際の出力抑制は発電量全体の10%以下にできるのではないか、というのが大方の専門家の見方です。厳し目に見ても10%を超えるイメージです。

「出力抑制シミュレーション」を公開へ

――そうはいっても、金融機関は「無制限の出力抑制」という条件だけで、最悪の場合を想定して事業性を評価しがちです。ファイナンスが難しくなりませんか。

鈴木 確かに事情に詳しくない金融機関の担当者にこうした定性的な説明をしても、なかなか理解してもらえない可能性があります。そこで、JPEAでは、原発再稼働と太陽光発電のロードマップに複数パターンの前提を置き、それぞれのシナリオでどの程度の出力抑制になるか時間軸に沿って試算して公表する予定です。この計算手法もすべて公開して、事業者や金融機関などが自分で試算できるようにしたいと思います。

 こうした、現実的に予測される「出力抑制シミュレーション」を複数の機関が公表すれば、事業者や金融機関は、複数の数値を比較しながら、実際の事業リスクを判断できるようになります。できれば、各電力会社が今後の出力抑制の予想値を公表してくれるのが理想です。経産省も、各電力会社にそのようにを促しています。

北海道の発電事業者は「無制限」を怖がらない

――試算においては、やはり最終的な原発稼働数をどう見るかが難しそうですね。

鈴木 政府は、11月末からの国連の会議に温室効果ガス削減目標を提出する必要があるため、今年中にはエネルギーミックス(電源構成)を決めるはずです。そうなれば、国全体として再稼働する原発の数が定まり、それを基に各電力会社が再稼働する数も見えてくるはずです。出力抑制の推移も予測しやすくなります。

――北海道では、すでに接続可能量を大幅に超えた接続申し込みを受け付けています。

太陽光発電協会(JPEA)の鈴木伸一事務局長(出所:日経BP)

鈴木 実は、北海道ではすでに実際の出力抑制を冷静に予測しつつ、「無制限の出力抑制」の条件の下でも、太陽光発電事業が開発されています。昨年、北海道電力における太陽光発電の接続可能量は117万kWと確定しました。だが、同社はすでに250万kW分の接続申し込みを受け付けています。接続可能量の2倍以上の申し込みを受け付けたのは、「無補償で無制限の出力抑制」を承諾した事業者が多数、含まれているからです。

 こうした北海道の太陽光事業者はファイナンスも確保しています。北海道の事業者が無制限の出力抑制でも投資に踏み切ったのは、「当面、泊原発が稼働しない」と見ているからです。原発が稼働しない10年程度の間に、ほぼ初期投資を償却してしまうシナリオを立てているようです。北海道以外の地域でも、このように出力抑制の可能性を現実に即して冷静に予測することで、「無制限の出力抑制」の条件下でも発電事業を開発できるはずです。